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コラム

デジタルマーケティング部 プロジェクトマネージャー Y

広報担当者が押さえておきたいオウンドメディア3つのポイント

オウンドメディアの取り組みについて様々なテーマで情報発信されていますが、今回は企業の広報担当者が押さえておきたい3つのポイントをまとめてみました。

まずはじめに

オウンドメディアとは自社が保有する情報発信メディアを指しますが、ここではWebサイトによる情報発信の媒体とし、目的・役割は大きく2つに分けたいと思います。

A.ブランディング目的

認知拡大・企業イメージ向上を目的とし、貴社らしさ(企業の人格作り)を意識して情報発信をすることで、発信に対する共感を醸成、ターゲットの認知および想起の獲得に寄与します。企業らしさをしっかり決めたうえで一貫性を保ちつつ、主体的に情報管理を行って発信していきます。

B.マーケティング目的

集客・間接的な売上アップを目的とし、顧客のニーズや検索エンジンを意識したコンテンツ発信することで、製品購入・サービス導入、商談などに繋げます。

それぞれの特長を簡単にまとめるとこのようになると思います。(図表1)

今回は広報担当者向けになりますので、「A.ブランディング(認知拡大・企業イメージ向上)」に焦点を当てて紹介していきたいと思います。

1.コンテンツを考える

では、ブランディング(認知拡大・企業イメージ向上)のためにオウンドメディアを活用するとは、どういうことでしょうか?
お客様との打ち合わせの中でよくこのような会話が出てきます。
「(今回のコーポレートサイトリニューアルに合わせて)オウンドメディアを作りたい」。このとき、単純に「ブランディング施策=オウンドメディアの活用」と捉えてしまうと、漠然とした認識のまま進んでしまい、コンテンツの考え方や指標の捉え方もズレてしまいます。こうした場合に弊社では、認識を合わせるために、次のように分解させていただくことが多いです。

「それは、(今回のコーポレートサイトリニューアルに合わせて)企業イメージ向上のために情報発信を強化していきたいので、オウンドメディアを作りたい、ということでしょうか?
このように、具体的に認識を合わせた状態にしてスタートすると検討しやすくなると思います。

企業イメージを向上させるということは?

企業イメージを向上させる方法については大きく2つが考えられます。

  • A. ゼロから新しい企業イメージ(製品・サービス・事業含む)を作り、認知拡大していく
  • B. すでにある企業イメージ(製品・サービス・事業含む)を中長期的に維持・向上していく

多くの企業に該当するのはBだと考えます。そして、企業イメージを高めるということは、企業に対するユーザーの「認知の量」と「情報(記事)の質」を高めていくこととイコールになり、以下のように分解することができます。

  • 「認知の量」を上げる=潜在層に対するリーチを増大させること
  • 「情報(記事)の質」を上げる=リーチしたユーザーをファン化させること

「認知の量」を上げるということ

「「認知の量」を上げる」とは露出の頻度を上げ、潜在層の段階からユーザーと情報の接触頻度を増やすということ。ただ、ユーザーと貴社の情報が1度接触すれば「認知」されたことになるかというとそうではありません。「××といえば貴社」というように、想起されて初めて認知されたことになります。

想起の例)

  • ××の製品・サービスといえば貴社名
  • ××業界のカーボンニュートラルの取り組みといえば貴社名

では、ユーザーと情報の接触頻度を増やし想起されるためには、オウンドメディアをどのように活用すればよいのでしょうか。原則として、「点」ではなく「面」でユーザーが接触できるようにすると、接触頻度は増えていきます(図表2)。「面」でユーザーとの接触頻度を増やしていくには、可能な限りトピックと記事を増やしていくことが重要になります。そうすることで顕在化したニーズの解決方法を知りたいと検索したときに情報がヒットしやすくなり、サイトへの訪問にも繋げていくことができるからです。
また、トピックと記事を増やしていくことは資産としてコンテンツを溜めていくことにもなりますし、トピッククラスターというSEO施策にも繋がっていきます。

トピッククラスターとは

記事の持たせ方や整理方法にも関係するので、SEO施策のひとつであるトピッククラスターについて簡単に説明したいと思います。トピッククラスターとは、記事を戦略的にグルーピングして内部リンクで「記事」と「トピック」ページを結び付ける手法です。こうすることによってメディアが運営しやすくなり、狙いたいキーワードで上位表示されやすくなります(図表2)。

「トピック」ページには検索ボリュームが多いビッグキーワードを盛り込み、検索で訪れたユーザーに対して、知りたい情報を網羅的に伝える内容にします。
例えば、カーボンニュートラルであれば、「トピック」ページには、「カーボンニュートラルとは何か」、「カーボンニュートラルの取り組み」といった内容を記載します。

一方、「記事」ページは、「トピック」ページの内容を補足するページにします。「トピック」ページは幅広く浅い内容になりますが、「記事」ページでは関連するキーワードを深掘りしてより詳細な内容を説明していきます。こうすることで、メディアとしての情報も整理され、検索エンジンにとってサイト内の巡回がしやすく、記事同士の関連性も伝わりやすくなり、SEO評価基準のひとつでもある「情報の網羅性」を高めることができます
(この他にもSEO施策はたくさんありますが、ここでは割愛したいと思います)。

ここでよくある失敗例を紹介したいと思います。
お客様側の事情で、「記事制作はスモールスタートで…」というご要望をいただくことがあるのですが…間違いなく失敗します。前述したとおり、トピックや記事が多ければ多いほどメディアとしての役割を果たします。また、オウンドメディア自体に即効性はなく、トピックや記事を増やしメディアとして力が付くまでに早くても1年半くらいはかかります。そのため、スモールスタートで始めるとそもそもユーザーとの接触頻度が極端に少ないため(図表3)、効果も見込めず記事制作の予算確保もできなくなるという悪循環に陥ってしまいます。

そして、この悪循環から抜け出そうとして記事制作の予算確保をしようとしても、経営層を説得するのは至難の業です。悪循環に陥らないために、コーポレートサイトリニューアルのときにまとめた本数の記事制作を行ない、公開後はコンスタントに記事制作を行なっていけば、業務負荷をそれほどかけずにメディアとして確立させていけると思います。

「情報(記事)の質」を上げるということ

情報発信を強化していくということは、「ステークホルダーとの良好な関係を築いていく」と言えます。気を付けたいのは、一方的な情報提供になりがちだということ。そのため、受け手にとって価値ある情報となるように創造していくことが大切だと言えます。受け手であるステークホルダーや、このメディアから伝える情報の価値とは何か?を考え続ける必要があり、その価値が高ければ高いほど、情報が広く深く広まっていきます。

そして、情報の価値を高めるために欠かせないのが社会性です。ここで言う社会性とは、その情報が世の中や社会にとってどれだけ重要なのかということ、つまり「社会との関連性」を付加したうえで情報発信していくことがとても重要になります。

社会性の具体例)

  • トレンド
  • ユーザー(ステークホルダー)のニーズ
  • 社会課題の解決

社会との関連性を付加する=ステークホルダーとの繋がりを持つ」ですので、「貴社らしさ(企業の人格作り)」や「社会との関連性」を意識しながらコンテンツ作りをしていくと良いと思います。

記事制作で押させえておくべきポイント

図表1にコンテンツ例を挙げましたが、それらの情報をダラダラ書くのではなく、以下のポイントを意識すると「情報(記事)の質」の維持にも繋がり、「貴社らしさ(企業の人格作り)」の表現しながら競合と差別化できると思います。

1.スタンスを伝えていく

情報を発信する企業が社会課題に対してどう向き合っていくのか/共存していくのか、企業の姿勢を伝えていく。

2.ストーリーを意識する

時代の流れや社会課題、トレンドを意識しながら「これまでどのような道を歩んできたのか」、「その製品やサービス開発にどのような背景があるのか」を「問いかけ」のあるストーリーで見せていく。

ストーリーは「問いかけ」を探すことを意識する

例)

  • 1. 「問いかけ」に対して、R&Dやイノベーションに関する内容を「答え」に設定する
  • 2. R&Dやイノベーションに関する内容が「答え」になるように社会的な「問いかけ」を考える
  • 3. 「問いかけ」と「答え」を繋げて文章化する
3.タイミングを逃さない

世の中の流れや社会課題が発生・顕在化したタイミングを逃さず、会社全体で事業やサービスを見つめ直し、そこに関連するストーリーを見出して早いタイミングで情報発信をしていく。

4.基本的に、「ユーザーは自分たちを知らないし、コンテンツに興味はない」という前提に立つ

「コンテンツを公開すれば見てもらえる」というのは遠い昔の話です。Webサイトはセルフサービスの媒体なので、ユーザーは自分で操作し、自分が興味のあるもの以外、一切見ることはありません。検索エンジン経由でWebサイトに訪問してくれたとしても、平均閲覧ページ数は1~2ページ、平均滞在時間は1分半くらいが多いと思います。

ユーザーはコンテンツを斜め読みしますし、これらの解析データの数値をどう読み取るかにもよりますので一概には言えませんが、はっきりしているのは、ユーザーはこちらが思っている以上にせっかちで、コンテンツに興味を持ってくれないということです。だからこそ、「誰に」、「どのようなコンテンツを」、「どのように発信していくのか」の企画・設計が重要になります。

2.運用を考える

企業の広報担当者のお話を聞くと、オウンドメディアは簡単に始められると思っていらっしゃる方が多いように見受けられます。しかし、公開したのはいいものの、1年後くらいに「運用」という壁にぶつかり行き詰まることはよくあるケースです。そうならないためにも、ここでは運用面からオウンドメディアを考えていきたいと思います。

まず、記事制作するには以下の3パターンが考えられます。それぞれのメリット・デメリットと合わせて紹介していきたいと思います。

A.内製

貴社内の担当者(または編集チーム)による記事制作。

メリット

  • コストは執筆時の内部工数しか発生しない
  • 誰よりも自社のことをよく知っている社員が執筆するため、貴社独自の内容で質の高い記事が期待できる
  • 取り扱うテーマや執筆時のルールを決めておけば貴社らしさ(企業の人格作り)を表現しやすい
  • 軌道に乗れば、オウンドメディアを通して、貴社が属する業界においてソートリーダーとしてのポジション確立も期待できる

デメリット(懸念点)

  • プロのライターによる執筆ではないため、質の安定化が難しい
  • 企業や担当者が熱量をもって制作に関与し続けないと、記事の質を維持しながら継続的に情報発信するのは困難(全パターン共通)

B.外部委託

外部の編集プロダクションかプロのライターに記事制作を依頼。企画、取材、撮影、ライティングの文字数などによって発生する費用は変動。

メリット

  • 客観的に記事制作ができるため、内製よりも共感を得やすい可能性がある
  • 良質な記事制作が期待できるため、メディアプランニングと絡めた情報発信が可能

デメリット(懸念点)

  • 企画力、取材力がないと内製より質が下がる可能性もある
  • 貴社らしさ(企業の人格作り)を表現するのは難しい可能性がある
  • 企業や担当者が熱量をもって制作に関与し続けないと、記事の質を維持しながら継続的に情報発信するのは困難(全パターン共通)
  • コストがかかるため、記事の量を維持し続けるのが難しい(※1)
  • オウンドメディア自体に即効性は求められないものの、コストをかけることにより経営層から短期間で費用対効果を求められやすい(※1)(※2)

※1

「認知の量を上げるということ」で紹介したとおり、スモールスタートで始めるとこの懸念点にぶつかります。最初にまとめた本数を執筆しておいて、公開後はコンスタントに執筆・公開を続けていけば回避しやすいと思います。

※2

費用対効果についてですが、「1.コンテンツを考える」で「情報発信を強化していきたい」と具体化したことがここに影響してきます。ブランディング施策という漠然とした形で進めると、どのように成果が出ているのかを経営層に示しにくくなります。一方、「情報発信を強化」と定義しておくとGoogle Analitycs(以下、GA)による解析データなどをふまえて、記事がどれくらい閲覧されているかという点で成果を示しやすくなります。注意点として、インターナルブランディングを目的として社員にも情報発信していくためにオウンドメディアの活用を検討されるご担当者様がいらっしゃいますが、GA解析では匿名ユーザーでしか計測できませんので、オウンドメディアを社員が閲覧したかは特定できません(技術的には可能ですが、社員がそのオペレーションに沿ってオウンドメディアを閲覧できるかなどをふまえると現実的ではありません)。

C.内製+外部委託

内製と外部委託(特集や記事広告など)の組み合わせで記事制作。発生するコストは内製による執筆時の工数と外部委託の費用。

メリット

  • 内製した記事と外部委託の記事を組み合わせることで、コントラストのある情報発信が期待できる
  • 良質な記事制作が期待できるため、メディアプランニングと絡めた情報発信が可能
  • 軌道に乗れば、オウンドメディアを通して、貴社が属する業界においてソートリーダーとしてのポジション確立も期待できる

デメリット(懸念点)

  • 企業や担当者が熱量をもって制作に関与し続けないと、記事の質を維持しながら継続的に情報発信するのは困難(全パターン共通)

これら3パターンを簡単にまとめるとこのようになります。(図表4)
また、全パターン共通のデメリット(懸念点)として「企業や担当者が熱量をもって制作に関与し続けないと、記事の質を維持しながら継続的に情報発信するのは困難」と書きました。本来であればオウンドメディアの戦略や計画と書きたいところではあるのですが、本気度があるのかを確認する意味で「熱量」と書く方が伝わりやすいのではないかと思い、このような表現にしました。

この表を見るだけでも、オウンドメディアは簡単ではないことが伝わると思いますので、計画的な運用の検討をお勧めします。

3.メディアの持ち方を考える

これまでの「1.コンテンツを考える」と「2.運用を考える」を合わせて、メディアとしてどういう持ち方が良いのかを4つのパターンで考えていきます。前提として、お勧めできない持ち方もありますのでご容赦いただければと思います。

A.他コンテンツに内包する

前提として、Aはリスクヘッジの観点が強く、このパターンを選ぶのならそもそもオウンドメディアの検討は見送るのが良いと思います。「他コンテンツに内包する」とは、例えばニュースコンテンツの中にオウンドメディアの記事を投稿し、カテゴリやタグなどで分類する方法になります。数ヶ月に1度などの更新頻度が少ない場合が該当しますが、これに該当しそうな場合はそもそもオウンドメディアの検討を見送るべきだと思います。一応、メリット・デメリットも書いておきます。

メリット

  • 本体サイトのドメインパワーを利用できる
  • 本体サイトのSEO評価に貢献できるかもしれない
  • 一時的に更新が滞っても目立たない
  • 軌道に乗せることができれば後述するBやCパターンに展開が可能

デメリット(懸念点)

  • カテゴリやタグ分けを整理しないと、ニュース記事と混在する
  • オウンドメディア用の記事間で回遊しづらい

B-1. コーポレートサイト配下にコーポレートサイトと同じデザインで作成

これはオウンドメディアをコーポレートサイト配下のサブディレクトリ(※)に持つパターンです。
※サブディレクトリ:「https://www.example.co.jp/xxx/」の「xxx」の部分

メリット

  • 本体サイトのドメインパワーを利用できる
  • 本体サイトのSEO評価に貢献しやすい
  • オウンドメディアの記事として情報発信できる

デメリット(懸念点)

  • 更新が滞ると運用できていないことが露呈し、社内外に悪目立ちする

B-2. コーポレートサイト配下にコーポレートサイトとは異なるデザインで作成

こちらも同じく、オウンドメディアをコーポレートサイト配下のサブディレクトリに持つパターンです。

メリット

  • 本体サイトのドメインパワーを利用できる
  • 本体サイトのSEO評価に貢献しやすい
  • オウンドメディアの記事として情報発信できる

デメリット(懸念点)

  • 必要に応じてサイト名を検討
  • 更新が滞ると運用できていないことが露呈し、社内外に悪目立ちする

C.新規ドメインで立ち上げる

これは新規ドメイン、またはサブドメインで構築するパターンになります。

メリット

  • 軌道に乗ればメディアとして確立できる
  • オウンドメディアの記事として情報発信できる

デメリット(懸念点)

  • ドメイン名、サイト名の検討が必要
  • 新規ドメインの場合、ドメインパワーはゼロからのスタート
  • 更新が滞ると運用できていないことが露呈し、社内外に悪目立ちする

これら4パターンを簡単にまとめるとこのようになります。(図表5)

図版5

オウンドメディアで押さえておきたいポイントを、他の制作会社とは違う観点で紹介してみましたがいかがでしたでしょうか?オウンドメディアは見切り発車してしまうと高い確率で失敗に繋がりますので、これらの内容と合わせて検討されることをお勧めします。

参考:オウンドメディア実態調査

  • 8割がオウンドメディアに「プラスの効果を感じている」
  • 効果を感じていること1位は「企業イメージ向上、ブランディング」
  • 4割が「外部委託をしている」と回答
  • KPIを設定し次なる改善に活かす
  • 6割が「コンテンツ数の維持」に課題を感じている

(引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000541.000002888.html)

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