コラム
ディレクション部 ディレクター K
大学サイトのリニューアルは、まず「情報整理」から
私は主に国内の大学サイトの設計や構築に携わってきましたが、大学サイトは外部に発信している情報も対象とするユーザーも幅広く、また運用面でも非常に多くの方が関わるケースが多いため、様々な課題を抱えやすいと感じています。
特に学部や部署などの個別サイトではなく、大学の本体サイト、つまり「全学サイトリニューアル」を行うときは、課題や検討事項が多く、担当になった方は頭を悩ませているのではないでしょうか。
「全学サイトリニューアル」に携わる際にご相談いただく課題として多いのが、大学全体のデザイン統一やマルチデバイス対応、情報発信の基盤整備(システム面と運用体制)などが挙げられますが、今回はその中でも構造設計に関わる「本学/学部・大学院・入試情報のすみ分け、まとめ方」についてお話したいと思います。
情報の棚卸しとすみ分け
本学と学部、大学院、入試情報の構造を整理する上で、まずは現状把握が必要不可欠です。長く運用していればいるほど、似たような情報が重複して公開されている可能性があります。
よくある例としては、学部の情報が学部ページ、受験情報ページに全く同じ内容で掲載されているなどです。(サイト構造および導線上、その形が最適な場合もあり、決してこの例がいけないというわけではありません。)
重複箇所を洗い出したら、次に、本当にそれは複数掲載が必要なのか、1つにまとめられるのか、該当箇所の情報を本来どこの部署が管理するのが最適なのかといった部分を検討します。あわせてユーザーの利用シーンや実際の運用方法なども想定しながら、大学としてどうあるべきかを念頭においた上で、情報のすみ分けを行います。
しかしながら、上記だけを前提に再整理しても、情報量の多さから結果的に深い階層に情報が埋もれたままになってしまい、ユーザーに閲覧されない可能性もあります。そこで、次に、情報のまとめ方を検討してみましょう。
まとめるには、外部サイト化も検討
1つのサイトにまとめることも1つの方法ですが、大学サイトは一般的に発信情報量が多いため、一部を外部サイト化することも検討する必要があります。
※ここでは、外部サイト化の例として、学部の情報を本学の下層ページとせずに、学部だけの情報に特化したサイトとして運用する例を挙げています。また、一概に、外部サイト化が良く、本学の下層に情報があるのはダメということではありませんので、その点はご留意ください。
サイトを整理する中で、もし以下の項目いずれかに合致する場合は、本学全体の情報量も踏まえながら、外部サイト化を検討する余地があると考えます。
- 学部・大学院、入試情報の発信している情報量が非常に多い
- 学部・大学院の数が多く、一つひとつの情報量は少ないが、結果的に情報量が多い
- 学部・大学院、入試情報の特徴、個性を強く打ち出したい
- 長期的にかつ定期的にコンテンツを拡張、見直ししていきたい
参考:弊社定期調査から見る、国内の学部、大学院、入試情報におけるまとめ方の傾向
では、国内の大学は、どんなまとめ方をしているのでしょうか?
弊社では、志願者数ランキング上位50校などを対象に「日本/海外大学サイトの動向」を定期調査していますが、そこから、「学部・大学院」「入試情報」それぞれのまとめ方の傾向も見えてきました。
【学部・大学院の場合】 外部サイト化の傾向が強い
まず学部・大学院についてですが、本学と切り離す形で外部サイト化している傾向が強いようです。一例としては、立命館大学や立教大学が挙げられます。
本学の下層ページとして情報を内包しているケースでは、明治大学や中央大学が挙げられます。
また、この調査から、外部サイト化させた際には、デザイン面でも、大学全体で統一している場合と、学部・大学院毎で自由に制作している場合に、完全に2極化していることが分かります。
自由に制作するのは、先述の「3. (学部・大学院、入試情報の)特徴、個性を強く打ち出したい。」が最大の理由だと思われますが、大学としてどこまでガバナンスを効かせるかは、必ず検討すべきでしょう。
【入試情報の場合】 本学への内包、外部化の割合は均衡
入試情報は、学部・大学院の数や規模などにより基本情報量の差が大きいため、本学に内包するか、外部サイト化するかを検討すべきと考えます。因みに志願者数ランキングをベースに調査した今回の調査では、ほぼ同数という結果でした。
入試情報を外部化している理由はさまざまだと思われますが、「3. (学部・大学院、入試情報の)特徴、個性を強く打ち出したい。」「4. 長期的にかつ定期的にコンテンツを拡張、見直ししていきたい。」などが主な理由と考えられます。
確かに、入試情報を外部サイト化することは、大学、ユーザー双方にとってメリットが大きいのではないかと考えます。
日本の18歳人口が2018年ごろから減り始めるとされる「2018年問題」も迫っており、受験生獲得競争は、今後より激化していくことは明白。入試情報を外部サイト化しておけば、改修に関わる影響を最小限に留めながら、アクセスログ情報や世の中のニーズに対応、コンテンツの拡充や見直しを行えるからです。
ただし、これも、一概に「外部サイト化がベスト」というのではありません。独自サイト化しても運用担当者や改修費用の確保ができない、など定期的な見直しを行わない(行えない)のであれば、本学に内包し運用も1本化してしまった方が、結果的に大学としての運用面・管理面、ユーザーとしての使い勝手としても有益な部分が大きい可能性もあると考えます。
最後に
今回お話した内容は、「学部・大学院」「入試情報」の情報のすみ分け、まとめ方を検討する上で考えるべきポイントの一部であり、そこに大学としての個別事情なども加味し落とし込んでいく必要があります。
組織面や運用上の課題から、すぐには本来理想とすべき形に到達できないケースもあるかもしれません。そのような場合には全て同時にリニューアルするのではなく、優先順位をつけながら、1~2年以上かけて段階的にリニューアルを行うのも1つの方法です。
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