サイト設計とは?“作り始める前に決めること”を発注者・初心者向けに整理
目次
「サイト設計って何をすること?」と迷っているあなたへ
「そろそろ自社のWebサイトを作りたい」「リニューアルを任されたけれど、何から手をつければいいのかわからない」。
Web制作の検討を始めたばかりの担当者や経営者の多くが、最初にぶつかるのがこの壁です。デザインや費用の話に進む前に、実はWebサイトの成否の大半を決めているのがサイト設計という工程です。サイト設計とは、Webサイトを作り始める前に目的・ターゲット・構造・導線を決める工程のことを指します。本記事では、要件定義から情報設計、構造設計、ワイヤーフレームまでの全体像を、発注者・初心者の目線でゼロから整理します。読み終えるころには、「何をどの順で決めればいいのか」「どこまで自分で考え、どこからWeb制作会社に任せればいいのか」という判断軸が手に入ります。
サイト設計とは何か?Webサイトの成否を“作る前”に決める工程
サイト設計の定義をひとことでつかむ
サイト設計とは、ひとことで言えば「Webサイトを作り始める前に、目的・ターゲット・掲載する情報・サイトの構造・ユーザーを導く道筋(導線)を決める工程」のことです。Webサイト設計、サイト構造設計といった呼び方をされることもありますが、指している中身はほぼ同じで、手を動かして作る前に“何を作るのか”を紙の上で決めきる作業だと理解してください。
なお、サイト設計という言葉は、使う人や文脈によって指す範囲が少し揺れることがあります。サイトマップ作りなどの構造設計だけを指す狭い使い方もあれば、目的の整理からワイヤーフレームまでの企画工程全体を指す広い使い方もあります。
本記事では発注者・初心者が全体像をつかめるよう、後者の広い意味で「サイト設計」を扱っていきます。Web制作会社との打ち合わせで話が噛み合わないと感じたら、「どこからどこまでの工程を指していますか」と確認してみると、認識のズレを早めに解消できます。
家づくりにたとえるとイメージしやすくなります。家を建てるとき、いきなり大工さんが木材を切り始めることはありません。まず「誰が住むのか」「何部屋必要か」「予算はいくらか」を決め、設計士が間取り図を描き、施主と何度もすり合わせてから着工します。Webサイトにおけるサイト設計は、まさにこの設計図を描く工程にあたります。設計図のない家が住みにくくなるように、設計のないWebサイトは「見た目はきれいなのに問い合わせが来ない」「どこに何があるかわからない」という残念な結果を招きやすいのです。
デザインやコーディングとサイト設計はどう違うのか
Web制作の流れは、大きく分けると「設計→デザイン→実装(コーディング)→公開」という順で進みます。このうちサイト設計が担うのは最初の「設計」であり、何を作るかを決める工程です。それに対してデザインは「決まった中身をどう見せるか」、実装は「見せ方が決まったものをブラウザで動く形にする作業」を指します。
初めてWeb制作を発注する方がつまずきやすいのは、この順番を飛ばして「どんなデザインにしようか」という見た目の話から入ってしまうことです。デザインはあくまで、設計で決めた目的や構造を視覚的に表現する手段にすぎません。土台となる設計が曖昧なままデザインの議論を始めると、「かっこいいけれど、誰に何を伝えたいのかわからないサイト」ができあがってしまいます。サイト設計とデザインは別の工程であり、設計が先、デザインが後という順番を押さえておくことが、失敗しないWeb制作の第一歩です。
なぜ設計が必要か。Webサイトは“あとから直す”が高くつく
なぜ設計がここまで重視されるのかというと、Webサイトはあとから直すコストが想像以上に大きいからです。ページが10ページ、30ページと増えたあとで「やっぱりカテゴリの分け方を変えたい」となれば、全ページのメニューやリンクを作り直すことになります。公開後の変更は、制作中の変更よりもさらに影響範囲が広がり、費用も納期も膨らみがちです。
もうひとつ、サイト設計には関係者の共通言語を作るという大切な役割があります。社内の上司や他部署、そして依頼先のWeb制作会社。立場の違う人たちが「このサイトは誰のために、何のためにあるのか」という同じ地図を見て進められるようになるのが、設計という工程の本質的な価値です。サイト設計の目的は、単に図面を作ることではなく、関係者全員の認識をそろえ、判断の基準を残すことにあると覚えておいてください。

なぜサイト設計が重要なのか?設計を飛ばしたWebサイトに起こること
「とりあえずデザイン案を見せて」が招く後戻り
サイト設計の重要性は、設計を飛ばした場合に何が起こるかを知ると実感しやすくなります。もっとも典型的なのが、認識のズレによる後戻りです。目的やターゲットを言語化しないまま「とりあえずデザイン案を見せてほしい」と依頼すると、Web制作会社は限られた情報から推測してデザインを作るしかありません。できあがった案を見て「イメージと違う」「上司の考えと違った」と修正を重ねるうちに、スケジュールは遅れ、追加費用が発生し、関係者は疲弊していきます。
この後戻りの原因は、デザインの良し悪しではなく、その前段で決めておくべきことが決まっていなかったことにあります。デザインは正解が一つではないため、判断基準がなければ議論は好みの言い合いになってしまいます。「このサイトの目的は新規の問い合わせ獲得で、ターゲットは初めて外注を検討する中小企業の担当者」という設計上の合意があれば、デザイン案も「その目的に合っているか」という基準で冷静に判断できるのです。
公開後に成果が出ないサイトに共通するもの
設計不足の影響は、制作中だけでなく公開後にも現れます。成果が出ないWebサイトには、いくつか共通点があります。訪問者が欲しい情報にたどり着けない、ページ同士のつながりがなく行き止まりになる、問い合わせボタンがどこにあるかわからない。こうした症状の多くは、構造と導線の設計が甘いまま作られたことに原因があります。
また、公開後の運用フェーズにも設計不足のツケは回ってきます。新しいお知らせや製品情報を追加しようとしたとき、置き場所のルールが決まっていないサイトでは、更新のたびに「どこに載せるか」で迷い、場当たり的にページが増えていきます。
担当者が異動や退職で交代すると、「なぜこの構成になっているのか」という判断の記録が残っていないため、リニューアルのたびにゼロから議論をやり直すことにもなりかねません。
さらに見逃せないのが集客面への影響です。サイトの階層構造やカテゴリ分けは、Googleなどの検索エンジンがサイトの内容を理解する手がかりでもあります。設計段階で構造が整理されていないと、どれだけ良いコンテンツを載せても検索で評価されにくいサイトになってしまいます。デザインは公開後でも比較的直しやすい一方、サイトの骨格である構造を直すのは大工事です。だからこそ「なぜ設計が必要か」と問われたら、あとから直せないものを最初に決める工程だから、というのが答えになります。
設計を省いた製造業のリニューアルで起こること
具体的にイメージするために、精密機器を製造する中堅メーカーが、サイト設計をほとんど行わないままWebサイトのリニューアルに踏み切った場合を考えてみます。社長の「今どきのかっこいいサイトにしたい」という一言で走り出し、目的もターゲットも曖昧なまま、デザインの検討から始めてしまうケースです。
すると何が起こるでしょうか。営業部は「製品カタログを充実させたい」と言い、総務部は「採用情報を目立たせたい」と言い、意見がまとまらないままページが継ぎ足されていきます。結果として、トップページには情報が雑多に並び、肝心の「技術力を伝えて新規取引につなげる」という本来の狙いはどこにも反映されない。公開後にアクセス解析を見ても、何をもって成功とするかの基準(KPI)を決めていないため、改善のしようもない。こうした事態は、最初に設計へ時間を割いていれば防げたはずのものです。逆に言えば、サイト設計に取り組むだけで、Webサイトづくりの失敗確率は大きく下げられます。
サイト設計の全体像|要件定義からワイヤーフレームまでの4工程
サイト設計と呼ばれる工程は、実際には複数のステップの集合体です。ここでは全体像を要件定義→情報設計→構造設計→ワイヤーフレームという4つの工程に整理して俯瞰します。まず地図を頭に入れてから、次の章で各工程の中身を掘り下げていきましょう。
この順番には意味があります。抽象度の高い決定(目的)から、具体度の高い決定(画面)へと、少しずつ解像度を上げていく流れになっているのです。順番を飛ばして先に画面の話を始めると、土台が揺らぐたびにすべてを作り直すことになります。
一方で、工程は完全な一方通行でもありません。ワイヤーフレームを描く中で「そもそもこのコンテンツは必要か」と情報設計に立ち返ることもあり、実務では前後を行き来しながら精度を上げていくのが自然な進め方です。

工程1:要件定義──「何のためのサイトか」を言葉にする
最初の工程が要件定義です。ここでは「誰に(ターゲット)、何を伝え、どんな行動をしてもらうためのサイトか(目的・ゴール)」を言葉にし、あわせて予算・納期・必要な機能といった条件を整理します。成果物としては、目的やターゲット、必須要件をまとめた要件定義書(簡易なものならA4数枚のメモでも構いません)が挙げられます。ここが曖昧だと後続のすべてがぶれるため、サイト設計の中でもっとも重要な工程です。
工程2:情報設計──「何を載せるか」を洗い出して整理する
次が情報設計です。目的とターゲットが決まったら、その人に届けるべき情報を洗い出し、グループにまとめ、優先順位をつけます。会社案内、製品情報、事例、よくある質問、問い合わせフォーム。載せたい情報を一度すべて書き出してから、「ターゲットにとって必要か」という基準でふるいにかけていきます。成果物はコンテンツの一覧表です。
工程3:構造設計──サイトマップと階層に落とし込む
3つめが構造設計です。整理した情報を「どのページに、どんな親子関係で配置するか」を決め、サイト全体の地図であるサイトマップ(ページの一覧と階層を示した図)を作ります。トップページの下にどんなカテゴリを置き、その下にどんな詳細ページをぶら下げるか。ここで決めた構造が、ナビゲーションメニューやURLの設計、そして検索エンジンからの評価にも直結します。中規模以上のWebサイトでは、この工程の丁寧さがそのまま使いやすさの差になって表れます。
工程4:ワイヤーフレーム──各ページの設計図を描く
最後がワイヤーフレームの作成です。ワイヤーフレームとは、各ページのどこに何を配置するかを線と枠で示した画面の設計図のこと。色や写真は使わず、「このページの一番上にはキャッチコピー、その下に製品の特長、最後に問い合わせボタン」といった情報の配置と優先順位だけを表現します。デザインに入る前にこの設計図で合意しておくことで、「できあがってから、イメージと違うと言われる」事態を防げます。ここまで完了して、ようやくデザイン・実装というWeb制作の後工程にバトンが渡るのです。
設計にかける期間は、サイトの規模や関係者の数によって大きく変わります。数ページの小規模サイトなら数週間で終わることもあり、サイトマップやワイヤーフレームの作成自体は数週間〜1か月程度に収まることが一般的です。一方、要件定義や関係者との合意形成まで含めると、中規模以上のコーポレートサイトでは1〜2か月かかる場合もあります。
「早く作り始めたいのに」と焦る気持ちは自然ですが、Web制作全体の品質は設計に投じた時間に比例すると言ってよいほど、ここは効いてくる工程です。スケジュールを組むときは、設計のための時間をあらかじめ確保しておきましょう。
サイト設計方法の前半|目的・ターゲット・コンテンツはこう決める
サイト設計の目的は「誰に・何を・どう動いてほしいか」で言語化する
ここからは、発注者自身が深く関わるべき前半工程の進め方を具体的に見ていきます。サイト設計の出発点は、目的を「誰に・何を伝え・どう動いてほしいか」という一文の形で言語化することです。「会社の顔として恥ずかしくないサイトにしたい」といった漠然とした思いを、「初めて外注先を探す中小企業の担当者に、自社の対応力を伝え、問い合わせをしてもらう」という具体的な文に変換します。
このとき役立つのが、サイトのゴール(コンバージョン)を先に決めてしまう方法です。問い合わせ、資料請求、採用応募、商品購入。サイトを訪れた人に最終的にとってほしい行動を一つ定めると、必要なページも導線も逆算で考えられるようになります。あわせて「月に何件の問い合わせを目指すか」といった数値目標(KPI)まで置けると、公開後の改善にも活きてきます。
言語化の材料集めとしては、既存サイトの課題の棚卸しと競合サイトの観察が有効です。今のサイトで問い合わせが少ないのは、情報が足りないからか、たどり着けないからか。競合はどんな順番で何を見せているか。
こうした事実を先に集めておくと、「なんとなくの理想」ではなく、根拠のある目的設定ができるようになります。
ターゲットとペルソナはどこまで作り込むべきか
目的とセットで決めたいのがターゲットです。よく「30代のビジネスパーソン」のような広い括りで済ませてしまいがちですが、サイト設計で使うなら、もう一歩踏み込んでペルソナ(象徴的な一人の人物像)を描くことをおすすめします。役職、抱えている課題、Webサイトに来る前に何を検索したか。ここまで具体化すると、「この人なら最初にどの情報を見たいか」という視点でページの構成を考えられるようになります。
ただし、ペルソナ作りそのものが目的化して何週間もかける必要はありません。大切なのは精緻な資料を作ることではなく、関係者の頭の中にある“お客様像”をそろえることです。営業担当者に「よくいるお客様はどんな人ですか」とヒアリングするだけでも、リアリティのあるペルソナの材料は十分に集まります。
ターゲットが複数いる場合は、「主役は誰か」の優先順位をつけておくことも忘れないでください。新規顧客と既存顧客、取引先と求職者。すべてに等しく応えようとするサイトは、結局誰にも刺さらないものになりがちです。主役を決めたうえで、他のターゲットには専用の入口ページを用意するなど、構造の側で応える方法があります。
掲載コンテンツの洗い出しと優先順位のつけ方
目的とターゲットが定まったら、掲載するコンテンツを洗い出します。コツは、最初から取捨選択せずに思いつく限りすべて書き出してから、あとで絞り込むことです。既存サイトがある場合は現在のページ一覧を、競合他社のサイトからは「載せているのに自社にない情報」を拾い出すと、抜け漏れを防げます。
絞り込みの基準はただ一つ、「そのコンテンツはターゲットの行動につながるか」です。社内では思い入れのあるコンテンツでも、ターゲットにとって不要なら優先度を下げる。この判断は社内の力関係に流されやすいところなので、要件定義で言語化した目的に立ち返って決めることが重要です。
あわせて、コンテンツごとに「原稿や写真などの素材を誰がいつまでに用意するか」も決めておきましょう。Web制作の現場でスケジュール遅延のもっとも多い原因のひとつが、発注者側の素材提出の遅れです。設計段階で担当と期限まで割り振っておけば、制作が始まってから慌てずに済みます。ここで作ったコンテンツ一覧が、次の構造設計の材料になります。
サイト設計方法の後半|構造・導線・ワイヤーフレームに落とし込む
サイトマップと階層構造は“浅く、迷わない”が基本
後半工程では、洗い出した情報をサイトの形に落とし込みます。構造設計の基本は、トップページを頂点に、カテゴリページ、詳細ページと階層を掘っていくツリー構造です。このとき大切なのは、クリック数の少なさそのものではなく、どの階層でもユーザーが迷わず次へ進めることです。
実は、UXの調査では「クリック数が3回を超えても満足度や離脱率は悪化しない」ことが示されており、古くから言われる「3クリック以内」という経験則に数値的な根拠はありません。ただし、階層を浅く整理しておくことには、検索エンジンのクローラー(サイトを巡回するプログラム)がページを発見しやすくなるという利点があります。そのため、構造を整理する実務上の目安として「主要ページへはトップから3クリック程度」は今も使われています。数値はあくまで目安、迷わせないことが本質です。

カテゴリ分けで迷ったら、ターゲットの探し方に合わせるのが正解です。自社の組織図どおりに事業部単位で分けるのではなく、訪問者が「製品から探すのか」「悩みから探すのか」を想像して分類します。カテゴリ名も、社内用語ではなくターゲットが検索で使う言葉を選ぶと、わかりやすさとSEOの両方に効いてきます。
このタイミングで、各ページのURLの付け方も一緒に決めておくと後がスムーズです。階層構造とURLの構造をそろえ、ページの内容がわかる英単語で命名する、という一貫したルールを作っておけば、運用中にページが増えても迷いません。
導線設計で「入口からゴールまでの道筋」を描く
構造ができたら、次は導線設計です。導線とは、サイトに入ってきたユーザーをゴール(問い合わせや購入)まで導くあらかじめ用意しておく道筋のこと。よく似た言葉に「動線」がありますが、こちらはユーザーが実際に動いた経路を指します。設計するのが導線、結果として観測されるのが動線、と覚えておくと混同しません。訪問者はトップページから来るとは限らず、検索経由で下層ページに直接着地することも多いため、「どのページから入っても、次に進む道が用意されている」状態を設計します。
具体的には、製品ページの末尾に事例へのリンクを置き、事例ページの末尾に問い合わせボタンを置く、というようにページ同士を目的に沿ってつなぐイメージです。行き止まりのページを作らないこと、そしてゴールへのボタンは色や位置で目立たせ、どのページからも迷わず押せるようにしておくことが、成果につながるWebサイト設計の要になります。
ワイヤーフレームは“完成イメージのすり合わせ装置”
最後に、主要なページのワイヤーフレームを作ります。すべてのページ分を用意する必要はなく、トップページ、主要なカテゴリページ、問い合わせページなど、型となる数ページ分があれば十分です。手書きのラフでも、パワーポイントの四角の組み合わせでも構いません。大切なのは見栄えではなく、「このページで一番伝えたいことは何か」「どの順番で情報を見せるか」を関係者の間で合意することです。
発注者の立場でワイヤーフレームを見るときは、「デザインが地味だ」といった感想ではなく、情報の順番と過不足をチェックするのがポイントです。この段階での指摘は数分で直せますが、デザインや実装が終わったあとの変更は数日がかりになることもあります。ワイヤーフレームは、後戻りコストを最小化するための“すり合わせ装置”なのです。
もうひとつ忘れてはならないのがスマートフォンでの見え方です。業種にもよりますが、今や多くのWebサイトでスマートフォンからのアクセスが過半数を占めます。パソコン向けの横長画面だけで設計を進めると、縦長の小さな画面では「大事な情報が下に埋もれて届かない」ことが起こりがちです。主要ページについては、スマートフォンでの表示順まで含めて確認しておきましょう。
発注者がやるべきサイト設計と、Web制作会社に任せてよい範囲
発注前に社内で決めておきたい3つのこと
サイト設計の工程をすべて自社でやりきる必要はありません。むしろ実務では、発注者が決めるべきことと、Web制作会社の専門性に任せたほうがよいことの線引きを知っておくのが、もっとも現実的で失敗の少ない進め方です。

発注前に社内で決めておきたいのは、大きく3つです。1つめはサイトの目的とゴール。ここまで見てきたとおり、これは自社の事業の話であり、外部には代えられません。2つめはターゲットのイメージ。日々お客様と接している自社にしか出せない情報です。3つめは予算と納期、そして社内の決裁ルート。特に「最終的に誰がOKを出すのか」を先に決めておかないと、制作の終盤で決裁者の一言によるちゃぶ台返しが起こりがちです。決裁者には設計段階から要点を共有し、早めに巻き込んでおくのが安全です。
Web制作会社と一緒に決めたほうがうまくいくこと
一方で、情報設計の細部、構造設計、ワイヤーフレームといった工程は、Web制作会社と一緒に進めたほうが品質が上がる領域です。プロのディレクターは、数多くのサイトを設計してきた経験から「この業種ならこの構造が定石」「このカテゴリ名は伝わりにくい」といった判断の引き出しを持っています。ユーザーの探し方を踏まえた階層設計や、検索エンジンの評価を意識したカテゴリ・URL設計は、専門知識の差が出やすい部分でもあります。
理想的な役割分担は、発注者が“判断の材料と基準”を出し、Web制作会社が“設計の選択肢と根拠”を出すという形です。「全部おまかせ」でも「全部こちらで決めたとおりに」でもなく、互いの得意分野を持ち寄る関係を作れると、サイト設計の精度は一気に高まります。制作会社を選ぶ際にも、見積もりの金額だけでなく、設計段階でどこまで一緒に考えてくれるかを確認しておくと安心です。初回の打ち合わせで、こちらの事業や顧客について質問を重ねてくれる会社は、設計を大切にしている会社だと考えてよいでしょう。
依頼時に用意しておくと伝わる資料と伝え方
では、発注時に何を用意すればよいのでしょうか。形式ばった提案依頼書(RFP)でなくても、目的・ターゲット・欲しい機能・参考サイト・予算・納期をまとめたA4一枚のメモがあるだけで、Web制作会社との初回打ち合わせの質は大きく変わります。参考サイトを挙げるときは「このサイトのようにしたい」だけでなく、「どこが良いと感じたのか」を一言添えると、意図が正確に伝わります。
複数の会社に相見積もりを取る場合も、同じ資料を各社に渡すことで、提案内容と金額を同じ土俵で比較できるようになります。
避けたいのは、要望を伝えずに「プロなんだから良い感じに提案してほしい」と丸投げすることです。材料がなければ、どんな優秀な設計者でも一般論の提案しかできません。逆に、この記事で整理してきた「目的・ターゲット・コンテンツの材料」さえ持ち込めば、あとの専門的な設計工程は安心して任せられます。準備した情報の質が、提案の質を決めると心得ておきましょう。
受け取った提案を評価するときの視点もお伝えしておきます。見るべきは、デザインの見栄えよりも「こちらが伝えた目的とターゲットが、構成にどう反映されているか」です。
提案書の中で自社の課題が言い換えられ、その解決策としてサイト構造や導線が説明されているなら、設計力のあるWeb制作会社だと判断できます。逆に、どの会社にも当てはまりそうなテンプレート的な提案しか出てこない場合は、設計工程を軽視している可能性を疑ってよいでしょう。
サイト設計でよくある疑問と失敗しないための注意点
サイト設計とSEOの関係──構造は“あとから直す”が一番高くつく
最後に、サイト設計にまつわるよくある疑問と注意点を整理します。まず多いのが「SEO(検索エンジン最適化)はいつ考えればいいのか」という疑問です。答えは明確で、設計段階からです。検索エンジンはサイトの階層構造やページ同士のリンクを手がかりに内容を理解するため、構造そのものがSEOの土台になります。公開後に記事を足すことはできても、骨格である構造を組み替えるのは大規模な改修になり、費用も検索評価へのリスクも大きくなります。サイト設計の段階で「どんな言葉で検索する人に、どのページを届けるか」まで意識しておくと、公開後の集客がまるで違ってきます。
「既存サイトの一部だけ直したい場合も設計は必要か」という疑問も多く聞かれます。答えは、規模に応じた“ミニ設計”を行うのがおすすめです。ページ1枚の追加でも、「誰向けのページか」「サイト全体のどこに置くか」「どのページからリンクするか」を決めてから作る。この小さな設計の積み重ねが、サイト全体の秩序を保ってくれます。
サイト設計に役立つツールと使い分け
「設計には専用ツールが必要か」という質問もよく受けますが、初心者はまず身近な道具で十分です。頭の中の整理にはマインドマップツール(XMindなど)、サイトマップは表計算ソフトやスライド資料でも作れます。より本格的に進めるなら、Web制作の現場で標準的に使われているFigma(フィグマ)のようなデザインツールでワイヤーフレームを作ると、そのままデザイン工程に引き継げて効率的です。大切なのはツールの選定ではなく、工程ごとに「何を決めるための作業か」を見失わないこと。ツールはあくまで思考と合意形成を助ける道具にすぎません。
もうひとつ注意したいのが、設計に時間をかけすぎて前に進めなくなることです。完璧な設計書を目指してペルソナやサイトマップを磨き続けるより、要点が押さえられた6〜8割の完成度で関係者と共有し、意見をもらいながら詰めていくほうが結果的に早く、質も上がります。設計は一度きりの儀式ではなく、制作の過程を通じて関係者と一緒に育てていくものだと捉えてください。
また、Webサイトは公開して終わりではありません。公開後はアクセス解析ツールで「設計どおりにユーザーが動いているか」を確かめ、想定とのズレを見つけて直していきます。設計段階で決めた目的とKPIは、このときの答え合わせの基準になります。設計・公開・検証・改善というサイクルを回すことまで含めて、サイト設計の価値だと言えるでしょう。
AI時代のサイト設計──“決める工程”はなくならない
近年はAIの進化により、デザイン案やコードの生成はどんどん速く、安くなっています。「それならサイト設計も自動化されるのでは」と思うかもしれません。しかし実際は逆で、作る作業が高速化するほど、何を作るかを決める設計の価値は相対的に高まっていきます。自社の事業の強み、お客様の実像、社内の事情。これらを踏まえて「このサイトは何のためにあるのか」を決められるのは、AIではなく事業の当事者だけです。
これからWebサイトを作る方は、ツールや流行のデザインに目を奪われる前に、まず本記事で紹介した要件定義→情報設計→構造設計→ワイヤーフレームという設計の型を押さえてください。この型は技術が変わっても古びない、Webサイトづくりの普遍的な地図になってくれます。
まとめ
サイト設計とは、Webサイトを作り始める前に目的・ターゲット・構造・導線を決める工程であり、要件定義・情報設計・構造設計・ワイヤーフレームという4つのステップで進みます。設計を飛ばしたサイトは後戻りと成果不足に苦しみ、設計に時間を割いたサイトは公開後も改善の基準を持ち続けられます。まず取り組むべきは、「誰に・何を伝え・どう動いてほしいか」をA4一枚に言語化することです。それだけで、Web制作会社との打ち合わせの質は見違えるほど変わります。サイトの新規制作やリニューアルを検討中で、構想が固まりきっていない段階からでも設計から一緒に考えてほしいとお感じなら、クライマークスにお気軽にご相談ください。
Web制作
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