コラム
デザイン部 デザイナー N
サステナビリティの情報発信で参考にしたいWebサイト2025年版
(この記事は、2020年のコラムをアップデートした再編集版です。2020年の元記事はこちら。)
2025年現在、サステナビリティやESG対応は、法規制や投資家・消費者からの要請、リスク対応などのさまざまな観点で、企業にとって避けて通れないテーマとなりました。これに伴い、サステナビリティサイトは取り組みの公表にとどまらず、企業の価値観や姿勢を伝える戦略的な場として進化しています。
そこで、サステナビリティサイトを新たに立ち上げたい場合や、既存のものを刷新・強化したい場合に、どのようなサイトを参考にしたらよいのか、デザイナーの視点から、事例をいくつかご紹介したいと思います。
制作前にチェックしたい評価・指標
2020年時点では、よく知られている評価・指標をご紹介しましたが、それらは企業活動そのものへの評価が中心で、Webサイトの出来栄えを直接評価する枠組みは多くありませんでした。しかし、この5年間でWebサイトのあり方自体を評価する指標もほんの少しですが増えてきたように思います。
まずは、それらの評価・指標の例についてご紹介します。
世界基準(グローバル)における評価/指標の例
- FORTUNE Change the World
- Global 100 Most Sustainable Corporations in the World (Global 100 Index)
- Bowen Craggs Index (The Corporate Digital Communications Index)
米ビジネス誌フォーチュン誌が発表している、事業を通じて社会に変革をもたらしている企業ランキング。
カナダの出版社Corporate Knights社による、「世界で最も持続可能性のある企業100社」のランキング。毎年ダボス会議で発表される。
英国のコンサル会社 Bowen Craggsによる、グローバル企業のデジタルにおけるコーポレートコミュニケーションのランキング。
日本国内における評価/指標の例
- 日経「SDGs 経営」調査 [日本経済新聞社、日経リサーチ]
- 企業版SDGs調査 [ブランド総合研究所]
- サステナビリティサイト・アワード [一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会]
- Gomez ESGサイトランキング[株式会社ブロードバンドセキュリティ]
サステナビリティコンテンツの参考事例5選
各企業のサステナビリティコンテンツを詳細に見ていくと、その表現方法や情報量は実に多種多様で、それぞれの企業の思想や個性が垣間見えます。
また、自社の業界に特化した分野に厚みを持たせ、独自性を出しているケースもよく見られます(例えば飲料メーカーであれば「水」や「自然環境」、建設業界であれば「安全・品質」や「地域との共生」、化粧品・美容系であれば「ジェンダーギャップ」や「多様性・自己表現」など)。
ここからは、2020年に紹介したサステナビリティサイトの参考事例を振り返りながら、それらが5年間でどのように進化してきたのか、デザイナーの視点からご紹介したいと思います。
1. ユニリーバ ― 「Sustainable Living」から「Corporate Sustainability」への進化

2010年に「サステナブル・リビング・プラン」を発表。10年目の節目となる2020年には、継続的に取り組んできた多岐にわたる活動とその思想を、優れた情報設計のもとに写真やカード型レイアウトで紹介し、生活者と共に歩む姿勢を強く打ち出していました。そこから5年を経た現在では、「A new era of corporate sustainability」を掲げ、気候・自然・プラスチック・生活水準の向上という4つの優先分野を明確化。各優先分野のページは長いシングルページ構成となっており、後述するP&Gのアプローチと重なる部分も見られます。全体として、社会へのメッセージを前面に押し出したストーリーテリング型へと進化を遂げているようです。
2. 良品計画 ― 共感を育む場から、開示情報を明快に示すシンプルなデザインへ

2025年の良品計画のサステナビリティサイトは、5年前に紹介した時の「感じ良いくらし」や「100の良いこと」といった生活者に寄り添う表現から、より体系的で整理された情報発信へと進化しています。ページは白と黒を基調としたミニマルなデザインで、環境、ガバナンス、サプライチェーン、ESGデータなどの要素を網羅的に整理。専門的な内容を真正面から提示し、透明性を重視する姿勢が前面に出ています。つまり、生活者に寄り添う表現や共感を育む場から、開示情報を明快に示すシンプルなデザインへと進化しており、大きな変化を遂げたと言えるでしょう。
3. サントリー ― 「人と自然と響きあう」の理念の実現を、実行計画と目標で表現

2020年当時に紹介したのは、一般消費者向けに「人と自然と響きあう」という理念を大きな写真や感覚的なビジュアルで表現した特設ページでした。森や水の風景、文化活動の様子を中心に据え、サントリーらしい情緒的なメッセージを伝える構成が特徴的でした。
一方、今回紹介するのは、サステナビリティ全体のトップページです。同じ理念を軸にしながらも、2030年〜2050年の具体的な数値目標やロードマップをインフォグラフィックで提示し、取り組み事例やレポートを体系的に整理。「人と自然と響きあう」という同社の理念実現を、実行計画と目標で表現しています。
4. 大和ハウスグループ ― UIを進化させコンテンツ表現を強化、読者と同じ目線で共感を育むWebメディアへ

大和ハウスグループ「Sustainable Journey」は、世界中のサステナビリティに関する事例を幅広く紹介するWebメディアです。2020年当時は、4つのカテゴリを中心に構成され、情報を伝えるWebマガジンとしての役割を果たし、利用者が最新の動向をキャッチアップできるようになっていました。それから5年が経ち、2025年現在の「Sustainable Journey」は、多様な連載や特集記事をタグで整理し、関心のあるテーマを横断的に検索できるなど、UIの進化がみられます。また、人物や地域に焦点を当てたストーリー仕立てのコンテンツはそのままに、写真やイラストを多用し、特集やランキングなど雑誌的な読み物としての体験が強化されています。情報を伝える場から、読者と同じ目線で共感を育むWebメディアへ。時代の変化にあわせてUIやコンテンツ表現をアップデートし、継続しながら進化している点が印象的です。
5. P&G ― 基本デザインは変えず、細部の表現を洗練させた進化

P&Gのサステナビリティコンテンツは、テーマごとに縦長のシングルページのような構成になっているのが特徴で、2025年の現在もその構成に大きな変化はないようです。写真やイラスト、円形モチーフなどが多用されており、アニメーションによる動きでユーザーの視線を引き付けるスタイルも当時と同じです。
全体としては、基本デザインを踏襲しながらも、細部の表現を洗練させた進化といえるでしょう。
最後に
ユニリーバ、良品計画、サントリー、大和ハウスグループ、P&Gの事例を通じて見えてきたのは、この5年でサステナビリティサイトが大きく進化してきた姿です。5年の定点観測を通じて、各社が自らのブランドらしさを軸に、表現をアップデートし続けていることが浮かび上がりました。サステナビリティを取り巻く価値観や課題は常に変化しています。だからこそ企業には、その変化を敏感に捉え、自らの取り組みを継続させつつ、発信の内容や表現を進化させていく姿勢が求められるでしょう。
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