Strategy / Design

このページの先頭へ

Insight

Web制作のさまざまな情報をご紹介

ECサイトの制作会社の選び方|“カート・決済・物流連携”を見極めるEC特有のチェックポイント

「ネットショップを立ち上げたいけれど、ECサイトの制作会社の選び方が分からない」「そもそも普通のホームページ制作と何が違うのか」と悩んでいませんか。

ECサイトはカート・決済・在庫・物流といった複数の仕組みが連携して初めて動く「売るためのシステム」であり、一般的なWeb制作会社の選び方をそのまま流用すると失敗しやすい領域です。

本記事では、ネットショップを初めて立ち上げる事業者の方に向けて、EC特有の論点に絞った制作会社選びのチェックポイントを、図解と仮定事例を交えて解説します。読み終える頃には、どの会社に何を確認すべきかが具体的に分かるはずです。

ECサイトの制作会社の選び方が一般的なWeb制作会社選びと違う理由

ECサイトの制作会社の選び方は、コーポレートサイトやサービスサイトを依頼するときの選び方とは判断基準そのものが異なります

一般的なWebサイトが「情報を見せて問い合わせにつなげる」ことを目的とするのに対し、ECサイトは注文を受け、決済し、商品を届けるまでの一連の商取引をWeb上で完結させるシステムです。デザインの美しさや情報設計の分かりやすさに加えて、システム連携と商売の仕組みづくりまでを担える会社かどうかが問われます。

「見せるサイト」と「売る仕組み」というECサイト構築の本質的な違い

コーポレートサイトの制作では、ブランドイメージを表現するデザイン力や、会社の強みを伝えるコンテンツ設計力が制作会社選びの中心になります。

一方でECサイト構築では、それらに加えてカートシステムの選定、決済手段の導入、在庫管理や物流との連携、会員情報やポイントの管理といった、目に見えない裏側の設計が売上を大きく左右します。

たとえば商品ページがどれほど美しくても、購入手続きの画面が使いにくければお客様は途中で離脱してしまいます。

注文が入っても在庫データが実態とずれていれば欠品によるキャンセルが発生し、出荷までの流れが整っていなければ発送遅延がレビューの低評価につながります。

ECサイトは、公開した瞬間から「店舗運営」というオペレーションが始まるWebサイトであり、制作会社にはその全体を見通す力が必要なのです。

一般的な選び方をECに流用したときに起こりがちな失敗

「デザインの実績が豊富だから」「見積もりが安かったから」という、一般的なWeb制作会社の選び方だけでEC制作会社を決めてしまうと、次のような失敗が起こりがちです。

まず多いのが、カートシステムの選定を誤ってしまうケースです。制作会社が特定のプラットフォームしか扱えず、自社の商材や販売方法に合わないカートで構築されてしまうと、後から「定期購入機能が追加できない」「実店舗の在庫と連携できない」といった壁に突き当たります。

また、開店後の運用がまったく考慮されていないケースも目立ちます。サイトは完成したものの、商品登録の方法や受注処理の流れが引き継がれず、更新のたびに追加費用が発生して運営が回らなくなるパターンです。

さらに、決済や物流の連携を「それは別の会社の領域です」と切り分けられてしまい、発注者自身が複数のベンダーの間で調整役を強いられることも少なくありません。

初めてネットショップを立ち上げる事業者にとって、この調整負担は想像以上に重く、プロジェクトの遅延や仕様の抜け漏れの原因になります。

EC制作会社に求められる3つの役割を理解して選ぶ

こうした失敗を避けるために、EC制作会社には大きく3つの役割が求められると理解しておきましょう。

1つめは、売れる売り場をつくるデザイン・UI設計の役割。2つめは、カート・決済・在庫・物流をつなぐシステム設計の役割。3つめは、開店後に売上を伸ばしていく運用・販促支援の役割です。

この3つをすべて自社で担える会社もあれば、システム部分はカートベンダーと組んで対応する会社、デザイン特化でシステムは対象外という会社もあります。

大切なのは、依頼先がどこまでの役割をカバーし、カバーしない部分を誰が担うのかを最初に明確にすることです。この視点を持つだけで、ECサイトの制作会社の選び方は格段に精度が上がります。以降の章では、それぞれの論点を具体的に掘り下げていきます。

カートシステムの理解度で見極めるECサイトの制作会社の選び方

EC制作会社を見極める最初のチェックポイントは、カートシステムに対する理解度と提案力です。

カートが最重要なのは、単なる「買い物かご機能」ではなく、商品管理・注文管理・顧客管理・決済連携までを担うECサイトの心臓部であり、一度選ぶと簡単には乗り換えられないからです。

まずは、ECサイトが注文を受けてから商品を届けるまでに、どのような仕組みが連携して動いているのかを図で確認しておきましょう。

ECサイトを支えるカート・決済・在庫・物流連携の全体構造図。注文、決済、受注・在庫管理、物流・出荷、お届け・フォローの5ステップが連携する流れを示す

図のとおり、お客様がカートで注文すると、決済サービスが入金を処理し、受注データに基づいて在庫が引き当てられ、倉庫や配送会社へ出荷指示が渡り、商品がお届けされます。

制作会社に求められるのは、この一連の流れを「どのサービスで」「どうつなぐか」まで設計する力です。

ECサイトのカートシステムとは何かを押さえておく

カートシステムとは、商品をカートに入れてから注文を確定するまでの購入機能に加えて、商品登録、受注管理、顧客管理、メール配信、クーポンやポイントといった販促機能までを提供する仕組みの総称です。

現在の日本では、Shopify、STORES、BASE、makeshop、futureshopといったASP型のカートサービスや、EC-CUBEのようなオープンソースのEC構築パッケージが広く使われています。

重要なのは、カートごとに「できること」と「できないこと」がはっきり分かれているという点です。

定期購入・頒布会への対応、実店舗のPOSとの在庫連携、BtoB向けの掛け払いへの対応、越境ECへの対応など、事業のやり方によって必要な機能は大きく変わります。

発注者側がすべてを把握するのは難しいからこそ、自社の商売のかたちを聞き取ったうえで、適したカートを提案してくれる制作会社が心強いパートナーになるのです。

制作会社とカートベンダーの役割分担を必ず確認する

ECサイト構築の現場では、「カートシステムを提供する会社(カートベンダー)」と「デザインや構築を行う制作会社」の役割が分かれていることが一般的です。

この役割分担があいまいなままプロジェクトが始まると、トラブルの原因になります

たとえば、公開後に決済エラーが起きたとき、問い合わせ先は制作会社なのかカートベンダーなのか。カート側の仕様変更でデザインが崩れたとき、修正費用はどちらの契約範囲なのか。

こうした線引きを契約前に確認しておかないと、いざというときに「それは弊社の範囲外です」とたらい回しにされ、対応が遅れて販売機会を失うことになりかねません。

見極めのポイントは、商談の段階で「公開後に障害が起きた場合、どこまで御社が窓口になってもらえますか」と具体的に質問してみることです。

役割分担を明確に説明でき、カートベンダーとの連携経験が豊富な会社であれば、回答は具体的になります。逆に回答が曖昧な会社は、EC特有の運用を経験していない可能性があると判断できます。

カート選定の段階から相談できるEC制作会社かを見極める

理想的なのは、カートがまだ決まっていない段階から中立的に相談に乗ってくれる制作会社です。

制作会社の中には特定のプラットフォームの構築を専門にしている会社も多く、それ自体は深い知見の証でもありますが、初めてのEC構築では「そのカートありき」の提案が自社に最適とは限りません。

たとえば、雑貨を扱う小売店が初めてのネットショップ立ち上げを検討しているとしましょう。

最初に相談した会社が特定カート専門の会社であれば、提案は当然そのカートを前提としたものになるでしょう。しかし、その会社の商材が将来的に定期便やギフト対応を必要とするなら、別のカートのほうが適している可能性もあります。

このようなケースでは、複数のプラットフォームを比較したうえで「なぜこのカートを推すのか」を理由つきで説明できる会社に相談できると、選定の納得感がまったく違ってきます。

カートの比較検討から伴走してくれるかどうかは、ECサイトの制作会社の選び方における最初の分岐点です。提案書にカート選定の比較と根拠が含まれているかを、必ず確認しましょう。

決済・在庫・物流連携まで設計できるECサイト構築会社かを確認する

在庫・物流

次のチェックポイントは、決済・在庫・物流というEC特有の3領域を設計できるかです。

この3領域への理解が浅い会社に依頼すると、サイト公開後に「売れたのに回らない」という深刻な事態を招きます。ECサイト構築は画面をつくる仕事であると同時に、商取引のインフラを整える仕事だからです。

ECの決済手段の設計しだいで売上は大きく変わる

決済は、お客様がお金を支払う瞬間を担う、ECサイトで最もデリケートな機能です。

希望する決済手段がないことを理由に購入をやめてしまうユーザーは少なくないとされ、決済手段の設計はそのまま売上を左右します。

クレジットカード決済を基本としつつ、ターゲットによってコンビニ払い、代金引換、キャリア決済、ID決済(Amazon Pay、楽天ペイなど)、後払い決済などをどう組み合わせるかは、客層と商材によって最適解が変わります

若年層向けの商材ならID決済やキャリア決済の優先度が上がりますし、高額商材や年配層向けであれば銀行振込や後払いのニーズが高まります。

また、決済導入には決済代行会社との契約が必要で、初期費用・月額費用・決済手数料は数%前後の範囲でサービスにより異なり、入金サイクルにも差があります

こうした実務を踏まえて「御社のお客様ならこの組み合わせが良い」と提案し、決済代行の選定や申請手続きまで支援してくれるかどうかは、EC構築の経験値がはっきり表れるポイントです。商談時には、過去の案件でどんな決済構成を組んだかを尋ねてみると良いでしょう。

在庫連携と受注管理の設計力がネットショップ運営を左右する

在庫管理は、ECの運営品質を支える屋台骨です。

とくに注意したいのが、実店舗を持っている場合や、楽天市場・Amazonなどのモールにも並行して出店する場合の在庫連携です。

たとえば、実店舗とネットショップの両方で同じ服を扱うアパレルショップを考えてみましょう。

在庫データが連携されていなければ、店舗で売れた商品がECサイト上では在庫ありのまま表示され、注文を受けたのに商品がないという売り越し(欠品キャンセル)が発生します。逆に慎重になりすぎて在庫を店舗とECに分けて持てば、機会損失が生まれます。

このような問題を防ぐには、POSシステムや在庫管理システムとカートをつなぐ設計が必要であり、どのシステム同士を、どの頻度で、どの方向に同期させるかという要件定義の力量が問われます。

受注管理についても同様です。注文確認、入金確認、出荷指示、発送通知といった日々のオペレーションを、誰が、どの画面で、どれくらいの件数さばくのかを想定した設計ができていないと、注文が増えた途端に現場が破綻します。

制作会社との打ち合わせでは、「開店後の1日の受注処理の流れ」を一緒に描いてくれるかを観察してみてください。業務フローまで踏み込める会社は、EC構築会社として信頼に値します。

物流連携までを見据えたEC構築の提案力を確かめる

物流は、ECの顧客体験の最後を締めくくる工程です。

注文の翌日に届くのか、3日後に届くのか、梱包は丁寧か、送り状番号はすぐ通知されるのか。配送品質はレビューやリピート率に直結するため、物流を軽視したEC構築は長期的に伸び悩みます。

立ち上げ期は自社の事務所から出荷する事業者が多いものの、注文数が増えてくると、発送代行会社や倉庫(フルフィルメントサービス)への委託が視野に入ります。

その際、カートシステムと倉庫側のシステム(WMS)を連携させて、受注データの自動連携や送り状番号の自動反映ができるかどうかで、運営の負担は大きく変わります。

制作会社を選ぶ段階では、そこまでの連携をすぐに実装しないとしても、「将来、出荷を外部委託する場合はどう拡張できますか」と質問してみることをおすすめします。

成長後の姿を見据えた回答が返ってくる会社であれば、目先の構築だけでなく、事業の成長に合わせて伴走できるパートナーだと判断できます。決済・在庫・物流の3点は、ECサイトの制作会社の選び方における「専門性のリトマス試験紙」と言えるでしょう。

ECプラットフォームの選定眼があるEC制作会社を比較する

3つめのチェックポイントは、ECプラットフォーム(構築方法)の選定を、自社の規模と目的に合わせて提案できるかです。

プラットフォーム選びと制作会社選びは表裏一体であり、ここを切り離して考えると、身の丈に合わない過剰投資や、逆にすぐ限界が来る過小投資につながります。

ECサイトの構築方法は、大きく4つのタイプに整理できます。まずは全体像を図で確認しましょう。

ECプラットフォーム4タイプの対応図。無料・低価格ASP、ASP・SaaSカート、オープンソース、フルスクラッチについて、向いている規模、費用感の目安、カスタマイズ性、特徴・注意点を比較した表

図のとおり、規模や目的によって適したタイプは異なり、費用感も無料〜数千円程度で始められるものから、数千万円規模に及ぶものまで大きな幅があります。それぞれの特徴を押さえておきましょう。

ASP型カートでのECサイト構築(BASE・STORES・Shopifyなど)の位置づけ

ASP型(SaaS型)は、カートサービスをインターネット経由で借りて使う方式で、現在のECサイト構築の主流です。

BASEやSTORESのような無料または低価格から始められるサービスは、個人や小規模事業者がまず開店してみる段階に向いています。初期費用を抑えて市場の反応を試せる一方、独自のシステム連携や高度な販促機能には限界があります。

本格的に売上を伸ばしたい事業者には、Shopify、makeshop、futureshopといった有料のASP・SaaSカートが選択肢になります。

デザインの自由度が比較的高く、アプリやオプションで機能を拡張でき、セキュリティ更新や決済まわりの保守をサービス側に任せられるため、運用の負担が軽いのが特長です。制作会社に依頼する場合の費用は、デザインや構築の範囲にもよりますが、数十万〜数百万円程度の幅で考えておくとよいでしょう。

注意したいのは、ASP型はサービスごとに設計思想が異なり、制作会社によって得意なカートが分かれることです。Shopifyの構築を得意とする会社もあれば、futureshopやmakeshopの実績が豊富な会社もあります。候補の会社が、検討中のカートでの構築実績を持っているかは必ず確認しましょう。

オープンソース・フルスクラッチでのEC構築が向いているケース

EC-CUBEに代表されるオープンソース型は、公開されているEC構築パッケージをベースに、自社サーバー上で自由にカスタマイズしていく方式です。

独自の会員ランク制度、複雑なBtoB向け価格設定、基幹システムとの密な連携など、ASP型では実現しにくい独自要件がある中規模以上の事業者に向いています。費用は要件によりますが、数百万円規模になることが多いと考えておくべきです。

ただし、オープンソース型は自由度と引き換えに、サーバー管理やセキュリティ対応を自社側(または保守契約した制作会社)で担う必要があります。脆弱性への対応を怠れば、カード情報漏えいなどの重大事故につながるリスクがあるため、構築力だけでなく保守体制まで含めて会社を選ばなければなりません。

フルスクラッチは、パッケージを使わずゼロから開発する方式で、大規模ECや、他にない事業モデルをシステムごと作り込みたい場合の選択肢です。費用は1,000万円を超えることが多く、大規模案件では数千万〜数億円規模に及ぶこともあり、開発期間も長期化するため、初めてのネットショップ立ち上げで選ぶことはまれです。

プラットフォームありきでEC制作会社を選ばないという鉄則

ここで強調したいのは、「プラットフォームを決めてから会社を探す」のではなく、「プラットフォーム選定から相談できる会社を探す」という順序です。

たとえば、ある食品メーカーが「有名だからShopifyで作りたい」と考え、専門会社に依頼したとしましょう。

しかし実際の要件を整理してみると、熨斗やギフト梱包への細やかな対応、産直ならではの配送日指定など、日本の商習慣に強い国産カートのほうが適していたという結論もあり得ます。プラットフォームを先に固定してしまうと、こうした比較検討の機会そのものが失われてしまうのです。

信頼できるEC制作会社は、ヒアリングを通じて商材・客層・成長計画を把握したうえで、複数の選択肢を費用感とともに提示し、「今はこの規模だからこのカート、将来この規模になったら移行を検討」というロードマップまで描いてくれます。

提案にプラットフォーム比較の視点があるかどうかは、EC制作会社を比較する際の分かりやすい判断材料になります。

開店後の運用・販促支援まで見据えたEC制作会社の比較ポイント

4つめのチェックポイントは、開店後の運用・販促をどこまで支援してくれるかです。

ECサイトは公開した日がゴールではなくスタートであり、「作って終わり」の会社と「売れるまで伴走する」会社とでは、1年後の売上に大きな差が生まれます。

ECサイトは公開してからが本番という前提を共有できる会社を選ぶ

コーポレートサイトであれば、公開後の更新は月に数回ということも珍しくありません。

しかしネットショップは、商品登録、受注処理、在庫更新、季節ごとの特集ページ、メールマガジン、セール企画と、日々の運営業務が絶え間なく続きます。しかも競合ショップやモールとの比較にさらされ続けるため、放置されたECサイトはあっという間に売上が細っていきます。

だからこそ、制作会社選びの段階で「公開後、私たちは何を自社で行い、何を御社に任せられますか」という問いを投げかけてみてください。

運用を見据えている会社であれば、管理画面の操作レクチャー、運用マニュアルの整備、公開後の定例ミーティングといった具体的な支援メニューを提示してくれるはずです。

一方、納品して契約終了という前提の会社に依頼する場合は、開店後の運営体制を自社で完結できるかを慎重に見積もる必要があります。ここの認識合わせを怠ると、「サイトはあるのに運営できない」という残念な状態に陥ります。

運用支援の中身を具体的に確認する(ネットショップ運営の伴走力)

「運用サポートあり」という言葉だけでは、実際の支援範囲は分かりません。

確認すべきは、集客・接客・リピートというECの売上をつくる3つの活動を、それぞれどう支援してくれるかです。

集客面では、商品名やカテゴリページのSEO対策、検索広告やSNS広告の運用、モールとの併売戦略などが挙げられます。ECは「出店すれば売れる」世界ではないため、サイトにお客様を連れてくる施策をどれだけ提案できるかが問われます。

接客面では、アクセス解析に基づく商品ページの改善、カゴ落ち(カートに入れたまま離脱)対策、レビュー活用などが中心になります。

リピート面では、メールマガジンやLINEの配信設計、ポイントやクーポンの施策、定期購入の促進といったCRM(顧客関係管理)の取り組みが売上の安定に効いてきます。

これらすべてを1社で担える必要はありませんが、「どの領域を、どんな体制で、月々いくらぐらいの幅で支援できるのか」を具体的に語れる会社は、ECの実戦経験が豊富だと判断できます。

過去に支援したショップで、どんな施策で成果が出たのかを(守秘義務の範囲で)聞いてみるのも有効です。

保守費用と改善サイクルの考え方をすり合わせておく

開店後には、システムの保守費用も発生します。

ASP型ならカートの月額利用料に加えて、制作会社との保守・運用契約が月額数万円程度からの幅で設定されることが一般的です。オープンソース型なら、サーバー費用とセキュリティ保守の費用が上乗せされます。

ここで大切なのは、保守費用を「何もなければ払い損のコスト」と捉えるのではなく、売上を伸ばすための改善サイクルへの投資と捉えることです。

アクセス解析データをもとに毎月の振り返りを行い、仮説を立てて商品ページやバナーを改善し、結果を検証する。この地道なサイクルを回せるかどうかが、開店1年後の成果を分けます。

契約前には、保守契約の範囲(障害対応のみか、改善提案まで含むのか)、対応時間、追加改修の単価感を確認し、月々の運用予算とセットで無理のない計画を立てましょう。開店後まで見据えた対話ができる会社こそ、長く付き合えるEC制作会社です。

ネットショップ制作を依頼する前に確認したい見積もり・実績・体制

5つめのチェックポイントは、契約直前の最終確認です。カートや物流連携といったEC特有の論点に加えて、見積もり・実績・体制という基本の確認をEC仕様で行うことで、選定の失敗をほぼ防ぐことができます。

ここまでの内容も含めて、EC制作会社選びで確認したい観点を1枚に整理しました。比較検討の際のチェックリストとして活用してください。

EC制作会社選びで確認したいEC特有のチェックポイント整理図。カート・プラットフォーム、決済まわり、在庫・物流連携、開店後の運用・販促、実績・体制、見積もり・契約の6分類で確認項目をまとめた図

図の6分類のうち、ここでは「実績・体制」と「見積もり・契約」について、EC特有の見方を掘り下げます。

EC構築実績は「同業種・同規模・同プラットフォーム」で見る

制作会社の実績を確認するとき、単に「ECサイトの制作実績があるか」だけを見るのは不十分です。

見るべきは、自社と条件の近い実績があるかという点です。

具体的には3つの軸で照らし合わせます。1つめは業種です。アパレル、食品、化粧品、BtoBの部材販売では、必要な機能も見せ方もまったく異なります。自社と同じ、または近い業種のEC構築経験があれば、業界特有の要件を先回りして提案してもらえます。

2つめは規模です。月商数十万円規模のショップと、月商数千万円規模のショップでは、求められるシステムも運用体制も違います。実績のショップがどの規模帯なのかを確認しましょう。

3つめはプラットフォームです。前述のとおり、検討中のカートでの構築経験があるかどうかで、プロジェクトの安定感は大きく変わります。

実績ページを見るだけでなく、商談の場で「この実績のショップでは、在庫連携や物流はどう設計しましたか」と一歩踏み込んで質問してみると、実績の深さが分かります。表面的な紹介しかできない場合は、実際の関与範囲が狭かった可能性もあります。

ECサイト制作の見積もり内訳から会社の設計力を読み取る

見積もりは金額の高い安いだけでなく、内訳の粒度から会社の力量を読み取る資料として活用しましょう。

信頼できるEC制作会社の見積もりには、要件定義・設計、デザイン、カート構築・設定、決済導入支援、商品登録(何点まで含むか)、テスト、公開作業、運用レクチャーといった項目が具体的に分かれています。

一方、「ECサイト制作一式」のような大ざっぱな見積もりは、後から「それは含まれていません」という追加請求が発生するリスクをはらみます。

また、極端に安い見積もりにも注意が必要です。

ECサイト構築の相場は、プラットフォームや規模によって数十万円から数百万円以上までの幅がありますが、相場から大きく外れて安い場合、テンプレートの流用のみで在庫・物流連携などの設計工程が省かれていたり、公開後のサポートが一切含まれていなかったりすることがあります。

複数社から見積もりを取り、「なぜこの金額なのか」を説明してもらったうえで、含まれる範囲を横並びで比較することが、ネットショップ制作の依頼では特に重要です。

契約前に確認しておきたいEC特有の権利と運用体制

契約段階では、一般のWeb制作でも重要な確認事項に加えて、EC特有の観点を押さえておきましょう。

まず、独自ドメイン、カートサービスの契約アカウント、顧客データ、商品データの所有・管理権限が自社にあるかです。これらが制作会社名義になっていると、将来の契約解消時やカート移行時に、ショップの資産を持ち出せないトラブルにつながります。

次に、担当体制です。ディレクター、デザイナー、エンジニアがどう関わるのか、公開後の窓口は誰なのか、レスポンスの目安はどれくらいかを確認します。ECは障害が売上機会の損失に直結するため、トラブル時の連絡体制は書面で明確にしておくと安心です。

最後に、相性も軽視できません。ネットショップの運営は年単位の長い付き合いになります。

商談の中で、こちらの知識不足を馬鹿にせず丁寧に説明してくれるか、売上目標に対して自分ごととして向き合ってくれるかといったパートナーとしての姿勢を見極めることが、数字には表れない大切なチェックポイントです。

ネットショップ

具体例で理解するECサイトの制作会社の選び方の実践

最後に、ここまでのチェックポイントが実際の選定でどう活きるのかを、具体的な事例を通して確認しましょう。

条件の異なる2つのケースを見比べることで、自社ならどこを重視すべきかの輪郭がはっきりするはずです。

実店舗を持つアパレルショップが初めてネットショップを立ち上げる場合

実店舗を2店運営するアパレルショップが、初めて自社ECサイトを立ち上げる場合を考えます。商品数は数百点、将来的には月商数百万円規模を目指したい、というケースです。

この場合の最重要論点は、実店舗とECの在庫連携になります。

店舗のPOSシステムとカートの在庫を同期できなければ、売り越しや機会損失が日常的に発生してしまうため、制作会社選びでは「POS連携の設計経験があるか」が第一の絞り込み条件になるでしょう。

プラットフォームは、拡張性と運用負担のバランスから有料ASPカートが有力候補になり、検討中のPOSと連携実績のあるカート、そしてそのカートの構築が得意な会社、という順序で候補が絞られていきます。

さらにアパレルは、シーズンごとの立ち上がりやセール企画といった販促カレンダーに沿った運用が売上を左右します。特集ページの制作やメール配信の支援まで含めて伴走できる会社かどうかも、比較の重要な軸になります。

このように整理すると、単に「デザインがおしゃれな会社」ではなく、在庫連携×アパレルEC実績×運用伴走という具体的な条件で会社を比較できるようになります。

食品メーカーが贈答需要を狙ってEC構築する場合

次に、ある食品メーカーが自社商品の贈答需要(お中元・お歳暮・母の日など)を狙ってECサイトを構築する場合です。

このケースで最初に検討すべきは、ギフトEC特有の機能要件です。熨斗・包装の指定、送り主と届け先が異なる注文、複数の届け先への一括注文、配送日時の指定、冷蔵・冷凍便への対応など、一般的なECにはない要件が多数出てきます。

そのため、カート選定の段階でこれらの機能に対応できるプラットフォームかどうかを見極める必要があり、日本の商習慣への対応力が高い国産カートが候補に挙がりやすいでしょう。

また、食品は繁忙期に注文が集中するため、受注処理と物流のキャパシティ設計が欠かせません。ピーク時の出荷体制をどう組むか、発送代行の利用も含めて業務フローを一緒に設計してくれる会社であれば、初めての繁忙期も乗り越えやすくなります。

この事例からも、ECサイトの制作会社の選び方は「良い会社を探す」のではなく、「自社の要件に合う会社を探す」作業だということが分かります。

EC制作会社への相談前に整理しておきたい自社の要件

2つの事例に共通するのは、相談前に自社の要件がある程度整理されているほど、会社選びの精度が上がるということです。

といっても、専門的な要件定義書をつくる必要はありません。

何を、誰に、どのように売りたいのか。実店舗やモール出店はあるのか。商品数と想定注文数はどれくらいか。出荷は誰がどこから行うのか。開店後の運営に割ける人員はいるのか。初期費用と月々の運用費はどの範囲で考えているのか。

この程度の大まかな整理でも、制作会社との初回打ち合わせの質はまったく変わりますし、各社の提案を同じ土俵で比較できるようになります。

逆に言えば、この整理の段階から丁寧にヒアリングして一緒に要件を固めてくれる会社は、それだけでEC構築のパートナーとして有力候補です。

本記事のチェックポイント整理図を手元に置き、複数の会社と対話しながら、自社のECの未来を任せられる1社を見極めていきましょう。

まとめ

ECサイトの制作会社の選び方は、デザインや価格だけで判断する一般的な選び方では不十分です。

カートシステムの提案力、決済・在庫・物流連携の設計力、プラットフォーム選定の中立性、開店後の運用・販促支援、EC仕様の実績と見積もりの見方という5つの視点で比較することで、失敗のリスクは大きく減らせます。

ECは開店してからが本番であり、パートナー選びの差は時間とともに売上の差として表れます。だからこそ、検討中の今このタイミングで、本記事のチェックポイントをもとに候補会社への質問を始めてみてください。

クライマークスでは、Web制作で培った設計力を活かし、対応可能な範囲でご相談を承っています。ご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

Web制作の相談をしてみる(無料)

03‑6773‑5445

受付時間 平日 10:00〜18:00

Web制作

大規模コーポレートサイトからサービスサイトやサテライトサイトまで、アートディレクションと情報アーキテクチャ設計を融合した、クリエイティブで訴求力の高いサイトを構築します。また、フロントエンドのみならずバックエンドのシステム構築、デジタルマーケティング支援までを総合的に提供しています。