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Journal

クライマークス社員のノウハウを、コラム、ケーススタディ、インタビューなどでご紹介

コラム

ディレクション部 ディレクター Z

ワークショップの企画・運営を経験して感じたこと

わたしは普段、Webディレクターとして、サイト制作におけるプロジェクトマネジメントやディレクション業務に携わっています。そんなわたしがコーポレートサイトのリニューアルにおけるワークショップの企画・運営に関わることになりました。
結論から先に言うと、ワークショップの開催は、プロジェクトの要望や課題を洗い出すために非常に有効な手段であると感じました。
本コラムでは、当時のプロジェクトの概要とそこで得た気づきをお話ししていきたいと思います。


※ ワークショップとは、個人またはグループ単位で課題に対して議論や意見交換をする「参加者体験型のアイデア発想手法」です。


今回担当させていただいたお客様は、「コーポレートサイトを営業ツールとして活用していきたい」という、リニューアルにおける大きなテーマがありました。
プロジェクトを進めていく中で、お客さまの営業メンバーから意見を吸い上げ、コンテンツ企画やサイト設計に反映させていく必要性を感じたため、プロジェクトの一環としてワークショップを開催することになりました。

ワークショップは2日間に分けて開催。計15名の方に参加いただきました。
セッションは全部で5個。グループワークを主体としましたが、個人としての意見も出してもらえるようにセッションの内容には工夫を凝らしました。

ワークショップは現状の課題と今後の方向性を洗い出す有効な手段

今回、ワークショップの企画・運営に携わり思ったのは、「導入できるのであればワークショップをプロジェクトの一部として制作スケジュールに組み込むべき」でした。

その理由は、大きく分けると次の2点を感じたからです。

  1. お客さまが、普段の業務でどのように顧客接点を持ち、製品やサービスのセールスをおこなっているのかを知ることできた。それにより、Webサイトを構築する我々も、サイトコンセプトやターゲットユーザの妥当性を検証できた
  2. お客さまの営業メンバーのみなさんを通じ、現場の要望・期待値を知り、サイト設計やコンテンツ企画に反映できた

今回のプロジェクトでは、専門性のあるコンテンツや、多様なニーズに対する検索軸を設け、顧客に寄り添ったWebサイトを構築することができました。
これは、ワークショップで複眼的な考察や議論を重ねることによって、様々なインプットを得ることができたことが大きかったと思います。
また、この結果に、アクセスログ解析などから得られる定量的なデータも加えることで、より有効な施策案が見つかったと思っています。

ここからは、ワークショップを進めるうえで、どのようなことに配慮したか、そして、各フェーズでどんな気づきを得たかをご紹介していきます。

ワークショップの進めるうえで気づいたこと

事前準備1:メンバー選定が第一の肝

まず、大事だったのは、参加メンバーの選定でした。
今回は、「顧客目線に立ち新たな価値や強みを見つける」というのが、ワークショップのテーマだったので、顧客接点が多く、製品・サービスなどの説明や提案をしている人を中心に、本プロジェクトのご担当者さまに選んでいただきました。

みなさん、お客さまの声をダイレクトに聞く立場にあり、経験値も高い方ばかり。商品・サービスのアピールポイントや、他社製品との違いを理解し、「どうしたら買ってもらえるか(導入してもらえるか)」を常日頃から考えていらっしゃいました。こうした方を選んでいただけたことが、有意義な議論につながったと思っています。

ご参加いただく方には、本プロジェクトのご担当者さまを通じて、「部署やチームの代表ではないこと」を明確に伝えていただきました。「責任を持って意見しなければならない」という意識を持ってしまうと正確な意見を聞けなくなる恐れがあったからです。

グループ分けも、明確な意図をもって行いました。
今回は、コミュニケーション能力や発言力が、各グループで平均的になるように、バランスよく配置することを配慮。参加するみなさんの部署・年齢・社歴・男女比などを鑑みて、1グループ4~5人程度としました。

ワークショップを運営する我々は、ファシリテーター、タイムキーパー、カメラマンの3名で臨みました(わたしはカメラマン役)。今回の規模・内容であれば、最低限、この3名は必要だと思いました。
ボイスレコーダーなどを活用したのもポイント。後から聞き直すことができ、その場の雰囲気も蘇り、その後の企画などに役立てることができました。

事前準備2:参加メンバーに配慮した時間設定

ワークショップは、お客さまの大事な社内リソースを活用して行います。長時間にわたる開催はなるべく避けることにも気をつけました。
ワークショップ全体で2時間半程度に収まるように調整。各セッション30分~40分程度とし、どのセッションに比重をおき、時間をかけるかよく検討したうえで、「話し合う時間」「意見をまとめる時間」「発表する時間」を配分しました。
また、日中はお客さまとの連絡や訪問もあると考え、できるだけ夕方から定時までの間に終わるようにしました。
参加人数に応じた開催場所や備品の確保も、大切な要素の一つだったと思います。

事前準備3:できるだけ簡略化した事前アンケートを用意

ワークショップを開催する前には、参加していただくみなさんに事前アンケートを配布しました。「どんなワークショップになりそうか」を、ある程度予測して気持ちの準備をしていただくためです。また、ワークショップを企画・運営する我々には、補足資料としてアンケートの集計結果を準備できるというメリットがありました。

事前アンケートの質問は、なるべく「回答に時間をかけなくて済む」ように、次のようなものとしました。

  • 複数選択肢から回答を選ぶ
  • Yes または No を選ぶ
  • 具体的な回答例を記載しておく

自由回答欄を極力減らし、考える時間が増えないよう配慮。チェックするだけで回答できるものを5~7点くらい考えたので、後の集計も簡単に終わりました。

当日:「事実」を聞き出す議題を用意

当日の議題サンプルをいくつかを挙げてみましょう。
「お客さまによって内容を変えて説明していることはありますか?」
「お客さまから追加で質問を受けるのはどのような内容ですか?」
「他社と差別化するためにどこに比重をおいて説明していますか?」
……
このような質問をベースとしながら、ファシリテーターが、会話の中で追加で質問。参加メンバーが顧客とコミュニケーションしている中で、どのような「事実」があるのかを聞き出していきました。

普段お仕事で一緒になることが少ない方が多いと考え、大いに語り、発散していただくことにも気を配りました。
正解が必要なわけではありませんから、自分の職種・領域以外にも積極的に意見を出し合っていただくよう進行しました。

その後:ワークショップの結果分析

ワークショップ後は、一過性のイベントとしないよう、議論した結果を報告書としてまとめました。
セッションの内容、回答、集計結果、撮影した写真などを整理していくと、コンセプトやコンテンツ企画のブレ、目に見えていなかった課題が浮き彫りになりました。
分析した結果を「どのようにWeb制作に活かしていくのか」は、本プロジェクトメンバーで再定義しました。

報告書がまとめ終わった段階で、報告会を実施。ワークショップから得られた参加者の経験や知識が、どのようなコンセプトや企画になっていくのかをご説明しました。

最後に

今回のワークショップでは、多くの成果を生み出しました。
実施の結果、利用者が知りたかったコンテンツの情報量が少ないということが分かり、ユーザーニーズに寄り添ったページを追加していくことに。
また、直感的にページを探せるように、ナビゲーション機能や、製品・サービスのカテゴライズ、検索軸を改めて検討し、構造設計・画面設計から見直すことになりました。
このように、本プロジェクトメンバーだけでは導き出せなかった課題が浮き彫りになり、それに対する解決策が具体的になっていったのです。
これにより、情報提供者視点の一方的なものではなく、ユーザーと同じ視点に立ったコーポレートサイトを創り上げられたと思っています。

さらに、営業メンバーのみなさんにワークショップに参加いただくことで、本プロジェクトに携わる方だけでなく、会社全体としての取り組みと認識していただけたようです。お客さまと我々の関係も、より深まったと感じています。

ワークショップ開催には時間も労力もかかりますが、Webサイト構築において効果は必ずある。そう感じた経験でした。

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