初めてのホームページ提案依頼書(RFP)作成ガイド
Webサイトを外注する際、最初に用意する「提案依頼書(RFP: Request for Proposal)」が曖昧だと、見積もりがバラバラになったり、追加費用や仕様ズレが発生しがちです。特に初めてRFPを作る担当者にとっては、「何を書けばいいか」「どこまで詳細に伝えればいいか」がわからず悩むことも多いでしょう。この記事では、ホームページ提案依頼書(RFP)の作り方をゼロから丁寧に解説し、仮想ケースやチェックリスト、評価設計、未来の自動化ツールまで含めて、実践的で他と差別化されたガイドをご提供します。これを読めば、あなた自身でも質の高いRFPを作成し、外注先から期待通りの提案を引き出すスキルが得られます。
目次
第1章:ホームページ提案依頼書(RFP)とは何か/その目的と活用価値
RFP の定義と他文書(RFI/RFQ)との違い
RFP(提案依頼書)とは、発注者が複数の外注先に対して「どういう提案をしてほしいか」を具体的に提示し、比較可能な提案を得るための文書です。
RFP は単なる見積もり依頼書ではなく、要件や制約、方向性まで含めた総合的な依頼仕様書です。
しばしば混同される RFI(Request for Information:情報提供依頼書) や RFQ(Request for Quotation:見積依頼書) とは用途が異なります。RFI は、まず業者の能力やサービス範囲を知るための情報収集段階、RFQ は仕様が固まっている状態で価格のみを見積もってもらう段階、という違いがあります。
通常、流れとしては「RFI → RFP → RFQ」と段階を踏むケースもあります。
なぜ RFP が必要か/発注者・受注者双方のメリット
RFP を適切に整備することは、プロジェクト成功の確率を大きく高め、業者とのやり取りにおける無駄や認識ズレを防ぐためのキーです。
まず発注者側のメリットとして:
- 複数業者へ同一条件の比較提案を求められるため、価格だけでなく提案内容の質も比較しやすくなる
- 自社内でプロジェクト要件を整理でき、抜け漏れや誤認識を未然に防げる
- 仕様を明文化することで、後工程での仕様追加や解釈ズレにより発生する追加費用・手戻りリスクを抑制できる
- 決裁者への説明資料として、文書化された要件や背景は強い根拠となる
受注者(制作会社やベンダー)側にもメリットがあります:
- 発注者の意図を正確に把握でき、過大なリスクを取らずに提案できる
- 自社の専門性を活かした代替案や技術選定を盛り込みやすくなり、差別化ポイントを打ち出せる
- 推定見積もり精度が高まり、見積条件の前提が明確なため調整・交渉がしやすくなる
このように、RFP は発注者・受注者双方にとって “コミットメント共有文書” として重要な役割を担います。
さらに、ホームページ制作という文脈では、デザイン要件、SEO要件、更新運用性、CMS選定、レスポンシブ設計、拡張性要件など多様な観点が絡むため、RFP がないと仕様漏れや認識ズレが頻出します。
第2章:RFP 作成の事前準備とヒアリング設計
ステークホルダー整理とヒアリング設計
RFP 作成の前段階で複数の社内関係者から要件を吸い上げ、意見を整理できていなければ、RFP は不完全なものになりやすいです。
理由は、Web サイトは企業戦略、営業、マーケティング、現場運用など複数部門の利害が交錯するプロジェクトだからです。
具体的な手順として、まず ステークホルダーを洗い出すことが重要です。例として、以下のような関係者を列挙できます(仮定型):
- 経営層:ブランド方向性、投資効果、KPI観点
- マーケティング部:流入施策、SEO、キャンペーン展開要件
- 営業部:問い合わせ導線、フォーム仕様、CRM 連携要望
- 現場編集担当者:更新頻度、運用性、更新のしやすさ
- IT/情報システム部門:既存システムとの連携、セキュリティ要件、インフラ要件
これらの各担当者に対して 事前ヒアリングシート を用意し、「現状の課題」「あるべき姿」「要望」「制約条件」などを項目別にヒアリングします。たとえば、「現在の Web 管理画面で更新に要する工数」「希望更新頻度」「将来的な機能拡張希望」などを具体的に聞き取ります。
この段階で注意すべきは、ヒアリングが個別バラバラにならないよう、上位方針 → 部門要望 → 現場レベルの詳細要望という階層構造でまとめることです。上位方針を先に得ることで、細かな要望の整理や取捨選択が進めやすくなります。
現状分析(As-Is)と理想像(To-Be)の整理
RFP において「現状の課題(As-Is)」と「理想の姿(To-Be)」を言語化できていなければ、業者提案のベースがブレやすくなるのが実態です。
理由は、業者はまず現状分析を行い、改善ポイントを提案することが常だからです。現状を曖昧にしたままでは、「どこに手を入れてほしいか」が伝わらず、提案が薄くなる恐れがあります。
具体的には、以下のような観点で As-Is と To-Be を整理することが有効です:
- 現在の Web サイトのアクセスデータ(PV、直帰率、流入チャネル構成など)
- 利用中 CMS・サーバー環境・ドメイン構成
- 更新頻度・運用フローの詳細(誰がいつ何を編集しているか)
- 現在把握している課題(表示速度、SEO 見えない、スマホ非対応、コンテンツ薄いなど)
- 理想像(例:月間問い合わせ数を 30 件に引き上げたい、SEO 検索順位を複数キーワードで上位 5 位以内にしたいなど)
こうした整理は、RFP の冒頭部分に記載される「背景・目的」に深みを与えるだけでなく、業者が初期提案を構想する材料になります。
優先度付けと方向性設定のコツ
すべての要望を同列に扱うと実装コスト過多・スコープ肥大化を招くため、RFP 段階で優先度を明示することが必須です。
理由は、業者が “最低限実現すべき項目(MUST)” と “可能なら盛り込みたい項目(WANT)” を区別できるようにすることで、見積もりと設計のズレを減らせるからです。
具体的には、要件ごとに MUST / WANT / OPTION(任意) のカテゴリを振るとともに、理由や妥協可能性も付記しておくとよいでしょう。
例えば、SEO 内部構造の最適化(MUST)、多言語対応(WANT)、チャットボット導入(OPTION)などに分けられます。条件ごとに「妥協案を提示可」「段階的導入も可」など注記を入れておくと、業者からの提案自由度も保てます。
また、優先度設計する際には「投資対効果」「実現難易度」「他要件との整合性」を判断軸とすることをおすすめします。高コストだが効果が薄い機能を優先させるより、まずは中小効果でも実現性の高い要素を押さえるほうがプロジェクトを守りやすいです。
第3章:ホームページ提案依頼書に盛り込むべき必須項目
この章では、RFP(提案依頼書)に必ず含むべきセクションと記載すべき内容を、ホームページ制作プロジェクトに即して詳しく解説します。
プロジェクト概要・背景・目的
「何を」「なぜ」「どこまで」を簡潔に伝えるプロジェクト概要は、業者の理解方向性を決定づける出発点となります。
このセクションには最低以下を含めるべきです:
- プロジェクト名・発行日・有効期限
- 発注側企業の基本情報(業種、事業概要、 Web 担当部署など)
- 背景・現状課題(As-Is)を簡潔にまとめた説明
- プロジェクト目的(To-Be)や目指す成果目標
- KPI や達成目標(例:問い合わせ月 50 件、SEO キーワード 3 語で 5 位以内達成、離脱率 30%以下維持など)
このような概要を冒頭で読むだけで、業者は貴社の目的と方向性を把握できます。
要件定義(機能要件 / 非機能要件)
要件定義は RFP のコア部分です。結論的に言えば、機能要件と非機能要件を両方記載し、量仕様で表現できる項目はできるだけ数値化するべきです。
以下が記載候補例:
- 機能要件
・フォーム設置(問い合わせフォーム、資料請求フォーム、FAQ フォームなど)
・会員機能・ログイン機能(ログイン/会員登録/パスワードリセットなど)
・ブログ/お知らせ機能、カテゴリ管理、タグ機能
・検索機能、フィルター機能
・CMS(WordPress/独自 CMS など希望)
・多言語対応、API 連携(CRM/MA/外部システム)
・ファイルアップロード、画像処理、地図表示など - 非機能要件(品質要件)
・レスポンシブ対応/スマホ最適化
・ページ読み込み速度(例:LCP 2.5 秒以内)
・アクセス同時数対応(例:50 同時アクセス)
・セキュリティ要件(SSL、WAF、脆弱性対応)
・将来拡張性・保守性、運用性(管理画面性能、モジュール化設計等)
・SEO 内部構造要件(URL 構造、メタタグ、パンくず構造など)
・アクセシビリティ要件、ブラウザ互換性要件
また、各要件には 優先度(MUST/WANT) を明示し、代替案や許容許容幅も注釈で記述しておくと業者側が提案しやすくなります。
制約条件・前提条件・参照仕様
このセクションは 実装制約や前提条件、参照仕様の共有を行う部分です。
記載すべき内容は以下:
- 既存システムとの連携仕様(API 仕様、DB 構造、他システム利用可否)
- 使用技術スタック指定(例:PHP、Laravel、React、CMS 仕様など)
- サーバー構成・インフラ要件(クラウド可否、ホスティング要件、SSL 要件など)
- 外部ライブラリ使用制限、ライセンス制限など
- 法規制・個人情報対応要件(プライバシーポリシー、Cookie ポリシー、GDPR 対応など)
- 互換ブラウザやバージョン対応(例:IE 対応不可、Chrome 最新、Safari 最新など)
- 権利・著作権・納品形式の前提(ソース渡し、納品形式、保守条件など)
こうした前提条件を明示しないと、業者が想定外の設計を持ち込んでしまったり、後工程で「できない仕様」が判明して混乱が生じることがあります。
スケジュール・予算・成果物
スケジュールと予算、そして成果物の定義を明確に示す部分は、業者がプロジェクト見通しを立て、提案をリアルに組めるかどうかの鍵になります。
記載すべき内容例は次の通り:
- プロジェクトの主要マイルストーン(提案締切、質疑応答期日、初回提案提出、提案選定、設計完了、制作期間、テスト期間、公開予定日など)
- 納期希望日および余裕期間(バッファ)
- 予算目安またはレンジ表記(例:300 万〜500 万円)
- 成果物一覧(例:画面デザイン案、HTML/CSS/JS ソース、CMS テンプレート、マニュアル、仕様書、API 仕様書、テスト報告書など)
- 保守・運用フェーズを含む場合の契約期間・対応範囲
予算を「固定額」で記載すると柔軟性が失われることもあるため、レンジ提示か、調整可能旨の注記を入れておくとよいでしょう。
第4章:提案希望内容と比較評価設計
RFP を配布した後の 提案書比較/評価/交渉フェーズ も成功の鍵を握ります。この章ではその流れを解説します。
提案フォーマット指定と提案内容指示
提案書のフォーマットをあらかじめ指定することで可読性と比較可能性が高まり、評価コストを下げられるのが実務的効果です。
一般的に指定すべき内容は以下:
- 提案書の構成(例:概要、仕様提案、デザイン案、スケジュール、見積り、保守運用方針、強み・リスク対応など)
- ページ数または枚数上限
- 提案フォーマット形式(PDF、PowerPoint、Excel 可否など)
- 提案内訳の表示基準(機能別・工程別・オプション含む、金額内訳を明示)
- 図版や補足資料提出可否(ワイヤーフレーム、画面遷移図、仕様書草案、参考サイトなど)
業者はフォーマットに則った提案がしやすくなり、発注側も読み比べが簡単になります。
評価基準と重みづけ設計
あらかじめ評価項目と配点を明示しておくことで、業者は提案時にその基準に応じた設計がしやすく、発注側も公正に選定できるようになります.
評価基準設計の一般的な軸には以下があります:
- 技術力・実績(過去事例、提案技術・構成)
- デザイン力・UI/UX 提案力
- 提案内容の合致度・要件への理解度
- コスト(見積金額/コスト妥当性)
- スケジュール対応力
- 保守運用対応・体制 (SLA、対応速度、人的体制)
- リスクマネジメント・提案の柔軟性・拡張性
これらの評価軸には 重みづけ(例:コスト 30%、提案内容 25%、技術力 20%、運用体制 15%、スケジュール 10%) を設定し、評価表形式で業者別採点できる仕組みを設計しておくとよいでしょう。
また、一次評価 → 二次プレゼン → 最終選定という多段階評価プロセスを設ける場合は、各段階での判断基準を明示しておくと透明性が高まります。
質疑応答期間・提出条件の設計
業者からの疑問を吸い取る質疑応答期間を設けることが、提案の乖離を防ぐために不可欠です。
通常、RFP 提出前に業者からの質問受付期間(Q&A 期間)を設け、その質問と回答を全業者に公開する方式がとられます。
設計上のポイントは以下:
- 質疑受付期間(例えば提案締切の 7~10 日前まで)
- 質問方法(メール、オンラインフォーム、Web 会議など指定)
- 回答期限と回答公示方法(全業者に見える形で一括提示)
- 再質疑の可否(1 回のみ or 複数回可否)
これにより、業者間で情報格差が生じにくく、提案水準の底上げにつながります。
ネゴシエーション・修正要望設計
提案受領後の交渉設計もあらかじめルールを設けておかないと、交渉が拗れて余計な時間を使うことになります。
実務的には、次のようなルールを設けておくとスムーズです:
- 修正案提出可否・回数制限(例:1 回まで修正可)
- 修正対応期限(例:提案後 3 営業日以内)
- 価格交渉対応範囲(マージン許容幅、値下げ交渉の折り返しルールなど)
- 契約前の最終仕様調整範囲(追加仕様の扱い、オプション扱い範囲、差額見積もりルールなど)
- 最終決定後の確定版仕様書発行フローと契約条項反映
これにより、業者も「交渉可能な枠」を意識して提案を構築しやすくなります。
第5章:注意すべき落とし穴と失敗事例シミュレーション
この章では、RFP 作成・運用で陥りやすい落とし穴を洗い出し、仮想ケースによる失敗シミュレーションも含めて解説します。
要件曖昧・優先度不明のリスク
要件が曖昧な表現(「使いやすい」「見やすい」「最新感ある」など)を残しておくと、業者側は安全設計を選びがちになり、コスト増または仕様不一致を招きやすくなります。
優先度が不明瞭だと、業者はすべてをやろうとして見積もり過大化、またはコスト削減のために重要機能を落とす設計を採る恐れがあります。
具体的なリスク例:
- 「スマホ対応」は書いてあるが、スマホ画面での細かな UI 要件や操作性要件がない → 実装者に丸投げ状態
- 「SEO 対策を強化したい」は書くが、具体キーワードや内部構造要件を提示していない → 提案が抽象的
- 全要件を MUST 扱いにしてしまう → スコープが膨張し、予算オーバー・スケジュール破綻を招く
対策として、本文で述べた MUST/WANT 分類 を徹底することが第一防衛策です。
予算やスケジュール未明記による混乱
多くの発注者が「予算は未定」「納期は柔軟に」など曖昧に記載してしまい、業者が想定外の過剰設計を盛り込んでしまうケースが散見されます。
そうなると、見積比較できない・発注判断に時間がかかる・追加費用交渉が発生しやすい、という事態になります。
例えば、提案段階で業者が「最新技術+多数オプションを盛った構成」を提案し、高額見積もりになるが、発注者側がその仕様を理解できず、結局低品質な案に落ち着くというシナリオもあります。
対策は、先述のとおり 予算をレンジ提示、バッファを考慮したマイルストーン設計、仕様調整余地の記載を入れておくことです。
参考資料不足や伝達ズレで発注後にズレが生じるケース
RFP に参考資料(既存サイト構造図、アクセスログ、競合サイト URL、過去施策資料など)を用意していないと、業者は解釈ベースで設計を始めざるを得ず、発注側の意図とズレが出やすくなります。
特にデザイン要件や情報構造(ワイヤーフレーム、画面遷移設計)は言葉だけでは伝わりにくいため、視覚資料(スクリーンショット、参考サイト例) を添付するべきです。
この種のズレが表面化するのは、制作途中で発注側から「あれ?こういう意図じゃなかった」と指摘 → 仕様修正 → 手戻り → 追加費用という流れになりがちです。
仮想ケースでの失敗シミュレーション
以下は、とある企業(仮称:株式会社 A 社)が RFP を作成した際の失敗例をシミュレーションします。
株式会社 A 社が中小 B2B 企業で、新規製品を訴求するために Web サイトをリニューアルしたいとします。担当者 B さんに RFP 作成を任されました。
B さんはまず、要件を「モダンなデザイン」「スマホ対応」「SEO 強化」「フォーム設置」くらいのキーワードだけで依頼文を作成しました。
「予算は未定、納期は柔軟」という表現を入れ、「提案よろしくお願いします」と締めました。参考サイトも 1 社だけ URL を載せただけという構成です。
複数社から提案を取ると、提案 A 社はシンプル構成+見積低め、提案 B 社は AI チャット連携込み+最新技術込みで高額、提案 C 社は過剰装備を盛った構成というばらつきが出ました。
B さん社内で評価する際、比較が困難となり、結局最初に見積額が低かった A 社案に妥協して発注。しかし、途中で「チャット連携を入れてほしい」「検索表示速度をもっと速くしてほしい」など追加要望が出て、追加見積・手戻りが頻発。最終的に、予算オーバーと納期遅延が発生した…というシナリオです。
この失敗例から学ぶべきポイントは:
- 要件が抽象的すぎて業者が大きく解釈してしまった
- 提案比較が非構造的で、判断基準がなかった
- 途中追加要望が容易に発生し、コスト膨張を招いた
- 参考資料が少なく、業者間で前提解釈が分かれた
この種の失敗を避けるため、先述の要件明確化・優先度設計・評価基準設計・参考資料添付・ネゴ可否設計を徹底することが極めて重要です。
第6章:実践テンプレートとチェックリスト(DL構成案付き)
この章では、実践で使えるテンプレート構成案と、チェックリスト形式の抜け漏れ確認方法をご紹介します。記事末尾に DL 想定構成案も置けるよう設計します。
テンプレート構成案(セクション別詳細)
以下は、「ホームページ 提案依頼書 作り方」に適したテンプレート構成案です。Word や Excel、PDF 形式で配布することを想定しています。
- 表紙
– プロジェクト名
– 発行日 / 有効期限
– 発注者名・担当部署・連絡先 - 目次
- プロジェクト概要
– 会社概要
– 背景・現状課題(As-Is)
– 目的・目標(To-Be/KPI) - スコープ・前提条件
– 要件定義(機能要件/非機能要件)
– 制約条件・前提仕様 - 提案希望内容
– 提案フォーマット・構成指示
– 表示すべき画面案・構成案(ワイヤーフレーム可)
– 提案範囲(企画/設計/制作/運用保守など) - スケジュール・マイルストーン
– 提案締切~公開までの流れ - 予算・成果物
– 予算レンジ
– 成果物一覧 - 評価基準・選定プロセス
– 評価軸と重み付け
– 提案比較手法・段階選定フロー - 質疑応答ルール
– 質疑受付期間・方法・回答方法 - ネゴシエーション・調整ルール
– 修正可否・回数・交渉範囲 - 添付資料一覧
– サイト構造図・アクセスログ・競合サイト URL・参考資料など - 提案書提出要領
– 提出方法・形式・提出期限 - 契約条件・保守運用条件(含む場合)
– 契約期間・SLA・解約条件・保守体制など - 宣誓事項・注意書き
– 著作権扱い、秘密保持条項、提案書の返却可否など
この章構成案に従えば、業者も読みやすく比較しやすくなります。
チェックリスト形式の抜け漏れ対応
テンプレートを使うだけでなく、RFP 作成段階でチェックリストを使って漏れを防ぐことも重要です。
以下は抜け漏れ防止用チェックリスト(仮名称)構成案です:
- プロジェクト概要に KPI/目標が入っているか
- 要件に機能・非機能両面が入っているか
- 項目ごとに優先度(MUST/WANT)分類がされているか
- 制約・前提仕様が明示されているか
- スケジュール・マイルストーンが記入されているか
- 予算レンジまたは目安が記載されているか
- 成果物一覧が明文化されているか
- 提案書フォーマット指示があるか
- 提案比較評価軸および重み付けがあるか
- 質疑応答ルールが設計されているか
- ネゴ交渉ルールが明記されているか
- 参考資料(アクセスログ、サイト構造、参考 URL 等)が添付可能か
- 提案書提出要領(期限、形式、提出方法)が明確か
- 契約/保守運用条件が記載されているか
- 秘密保持・提案書扱いルールが含まれているか
このチェックリストを RFP 草案段階で使えば、抜け漏れをかなり抑制できます。
実際に使う際のコツとカスタマイズ方法
テンプレートをそのまま使うのではなく、プロジェクト特性に応じてカスタマイズすることが肝要です。
以下は実践上のコツ:
- 規模や予算に応じてテンプレート内のセクションを簡略化/拡張
- 業種特有要件(EC 機能、予約機能、会員システムなど)はテンプレートにオプションセクションとして差し込み
- 参考サイト例を複数入れて業者の方向性ズレを防ぐ
- 技術制約や既存システム連携要件が強ければ、それ専用セクションを挿入
- 評価軸重みは自社戦略・重視軸に合わせて変える(例:UI 重視ならデザイン配点を高める)
- チェックリストを常に最新版に更新し、横展開できる体制作りを
- RFP を一度作ったら、次回からの修正版としてテンプレート化し社内ストック化
これらの使い回し・柔軟性を持たせることで、RFP 作成業務を効率化できます。
第7章:今後の RFP 作成動向と AI/自動化ツールの活用
この章では、RFP 作成や提案比較の将来潮流、および AI や自動化ツールの活用可能性 に言及します。
AI 支援・自動見積もり支援ツールの登場
今後は AI や自動化支援ツールが RFP 作成や初期提案比較工程に介在する流れが加速すると予想されます。
最近では、AI によって既存 Web 情報を解析し、RFP 生成支援を行うサービスが出始めています。
例えば、現状サイトのアクセスデータや構成情報を AI に読み込ませ、改善点を自動抽出、改善要件候補を列挙してくれるような支援ツールも将来的には普及する可能性があります。
また、提案書比較支援ツールも台頭しつつあります。複数の提案書を自動で解析・採点化し、評価軸ごとのスコア化を支援するツールが将来的には一般化し得るでしょう。
こうしたツールをうまく活用すれば、RFP 作成コスト低下、評価工数削減、提案比較精度向上につながるため、今後は使い手側のリテラシー(ツール選定能力)が差になる可能性があります。
RFP の標準化・テンプレート共有の流れ
業界横断的な RFP テンプレート標準化 の流れが徐々に広まる可能性が高いです。
その背景には、プロジェクト間で要件共通性が高まっている点、ベンダー・発注者双方の効率化ニーズ、そしてオープンなテンプレート共有文化の進展があります。
近年、業界団体やコミュニティで共有される RFP フレームワークやテンプレートが増えており、将来的にはクラウド上で共同改変できる形態(GitHub やテンプレートライブラリ方式)が主流となるかもしれません。
その際、テンプレートそのものへの適用性だけでなく、自社固有要件をどう差し込むか、テンプレート改変履歴管理、運用性を重視した拡張性設計の視点が重要になります。
変化に強い RFP 設計の視点
将来変動を見据えた RFP 設計、すなわち 柔軟性・拡張性を備えた RFP 設計 が重要な差別化要素になります。
具体的には、以下の視点が有効です:
- 初期段階では必須機能だけを確実に記述し、将来的な拡張機能を段階導入とする設計
- 利用する技術や構造が将来拡張しやすいモジュール設計前提と記述
- API や外部連携仕様を未確定とし、「将来連携可能性を持たせる要件」記載
- 評価設計に、将来アップグレード可能性や拡張対応力を配点に組み込む
こういった設計視点を RFP 段階から織り込むことで、プロジェクト開始後の変更耐性を高め、長期的な可変性を担保できます。
まとめ
本記事では、「ホームページ提案依頼書(RFP)作成ガイド」と題して、初めての担当者でも迷わず設計できる構成、要件整理、提案比較設計、失敗事例、テンプレート・チェックリスト、未来視点までを包括的に解説しました。
重要なポイントをあらためて整理すると:
- RFP はただの見積もり依頼ではなく、プロジェクト仕様・方向性を業者と共有するための戦略文書
- 要件を曖昧にせず、MUST/WANT 分類・具体数値化を徹底
- 提案比較基準・評価設計・質疑応答ルールまで設計しておけば判断がスムーズ
- 参考資料添付・テンプレート・チェックリスト活用で抜け漏れを防止
- 将来 AI/自動化ツールを活用する動向を意識し、変化に強い設計を意識
今すぐ取り組むべき理由は明快です。質の低い RFP を元に走り出したプロジェクトは、仕様ズレ・追加工事・納期遅延というリスクに直結します。
だからこそ、今この瞬間に正しい構成とチェックリストを元に RFP を作り、複数業者から比較可能な提案を取りにいくことが、外注成功への近道です。
Web制作
大規模コーポレートサイトからサービスサイトやサテライトサイトまで、アートディレクションと情報アーキテクチャ設計を融合した、クリエイティブで訴求力の高いサイトを構築します。また、フロントエンドのみならずバックエンドのシステム構築、デジタルマーケティング支援までを総合的に提供しています。