Webサイト制作は公開後が本番|運用設計まで見据えた制作計画の立て方
Webサイト制作のプロジェクトが終わりに近づくと、関係者の意識は「公開日」という一点に収束しがちです。しかし、Webサイト制作公開後にこそ、本来の事業価値は生まれます。アクセスが伸び悩んだとき、誰がデータを見て、どんなフローで改善するのか。コンテンツの追加更新は、社内で回せるのか、外部に依頼するのか。サーバーやCMSのアップデートは誰が判断するのか。これらを公開後に考え始めるのは、すでに遅すぎる選択です。本記事では、運用設計・更新体制・KPI・保守までを制作段階でどう組み込むかを、現場で動かせる粒度で解説します。
目次
Webサイト制作公開後を本番と捉え直す|公開ゴール病からの脱却
Webサイト制作公開後を「おまけ」ではなく、「本番」と捉え直すことが、すべての運用設計の出発点になります。公開日を最終ゴールに据えてしまうと、その後の運用設計は必ず後手に回り、せっかく作ったサイトが「動かないまま古びていく資産」になってしまいます。
その理由は、Webサイトという商材が、公開した瞬間から市場・競合・検索アルゴリズム・ユーザー行動の変化にさらされ続けるためです。テレビCMやチラシのように一度作って配って終わる媒体ではなく、毎日の検索行動・閲覧行動・SNS拡散の中で評価され続けます。にもかかわらず、制作プロジェクトの工程表は「公開」を最終マイルストーンとして区切るため、関係者の意識も自然と公開日で終わってしまいがちです。この構造こそが、多くの企業が陥る「公開ゴール病」の正体です。
公開ゴール病が引き起こす典型的な症状は3つあります。
第一の症状は、運用責任者が空白になる現象です。制作段階ではディレクターや担当者が中心になって動いていたものの、公開後に「誰が日々の改善を回すのか」が決まっていないため、運用責任が宙に浮きます。結果として、アクセスデータは誰も見ない、不具合の連絡先もはっきりしない、更新依頼が制作会社に集中して費用がかさむ、という状態に陥ります。
第二の症状は、コンテンツの賞味期限切れです。公開時点では最新の事例・実績・サービス内容を載せていても、半年もすれば古い情報が混ざり始めます。更新フローが設計されていなければ、古い記事や実績が放置され、ユーザーからは「動いていないサイト」と判断されます。検索エンジンも更新頻度の低いサイトを評価しづらくなるため、検索流入も徐々に減っていきます。
第三の症状は、改善仮説の不在です。KPIや分析体制が用意されていなければ、「次に何を変えるべきか」を議論する土台が存在しません。会議で「もっとアクセスを増やそう」と話しても、施策の優先順位がつかず、結果として何も決まらない会議が繰り返されます。
例えば、BtoBサービス業の会社が、ブランドサイトをフルリニューアルしたとします。公開日に向けて全社で盛り上がり、公開直後はプレスリリースやSNSで話題になります。ところが3か月後、アクセスは公開直後の3分の1に落ち込み、半年後には更新もほぼ止まる。こうした事例は珍しくありません。原因は制作物の品質ではなく、Webサイト制作公開後の運用設計が事前に組まれていなかったことにあります。
つまり、公開後を本番と捉え直すとは、「公開を達成と呼ばず、運用の起点と呼ぶ」発想転換にほかなりません。制作要件を固める段階で「公開後12か月の運用ロードマップ」が話題になっているかどうか。これが、運用設計まで見据えた制作計画になっているかを判定する最初の試金石です。
公開後を本番と位置づけることがもたらす経営的インパクト
公開後を本番と位置づける視点は、単なる現場のスタンスの話ではなく、経営的なインパクトを持ちます。ホームページは無形資産であり、検索流入・問い合わせ・採用応募・ブランド認知という形で売上や採用に直結する装置です。運用設計を組み込むことで、この装置を「半年で錆びる消耗品」から「年々価値が積み上がる資産」へと変えることができます。逆に、運用設計を欠いた発注は、初期費用だけが大きく、リターンの見えない投資になりがちです。経営層への説明資料には、初期費用だけでなく「公開後12か月の運用投資と期待リターン」をセットで示すべきだ、というのが本記事のスタンスです。
制作段階で組み込むべき運用設計の全体像
Webサイト制作公開後を本番と捉えるなら、運用設計は制作段階の要件定義に並ぶ重要工程として組み込む必要があります。公開後に慌てて作るのではなく、制作プロジェクトのスコープに「運用設計フェーズ」を明示的に含めるという発想です。
なぜ制作段階で運用設計を組み込むのかというと、運用に必要な情報の多くは制作プロセスを通じてしか得られないからです。サイト構造、CMSの仕様、コンテンツテンプレートの設計、計測タグの実装、フォームのデータ受け渡し設計など、運用に直結する要素は制作中に一気に決まります。これらが「運用を想定して」設計されているか、それとも「とりあえず作ってある」だけなのかで、公開後の運用負荷は何倍も違ってきます。
ここでは、制作段階で組み込むべき運用設計の全体像を、5つの構成要素として整理します。
第一に、運用ガバナンスの設計。誰が運用責任者で、どんな意思決定権限を持つのか。社内のWeb担当部署・関連部門・経営層の関わり方をルール化します。
第二に、KPI設計と分析環境。事業目的→KPI→計測指標→ダッシュボードという順番で設計し、公開時点で「見るべき数字」と「見る場所」を整えます。
第三に、更新フローの設計。新着情報、事例、ブログ、サービス改訂など、更新が発生するコンテンツ種別ごとに、誰がどんなプロセスで更新するかを定義します。
第四に、保守・セキュリティ体制。CMSアップデート、サーバー監視、SSL更新、ドメイン管理、バックアップ運用などのオペレーションを設計します。
第五に、改善ロードマップ。公開後3か月・6か月・12か月時点で何を測り、どう判断するかというPDCAの設計図を引いておきます。
ここで重要なのは、これらの運用設計を「制作会社任せ」「公開後の宿題」にせず、発注側のWeb担当が主体となって決めていくという姿勢です。制作会社はあくまでパートナーであり、運用の主役は発注側の組織だからです。制作会社が提案する保守プランや更新サポートは選択肢の1つに過ぎず、自社にとって何をどこに依頼すべきかは、発注側の運用設計から逆算して決めるものです。
例えば、教育業界の会社が、新サービスのローンチに合わせてサイトを制作したとします。要件定義の段階で運用設計フェーズを設けず、公開直前になってから「誰が新着情報を更新するのか」「資料請求のメール対応は誰がやるのか」を慌てて決めるとどうなるか。担当部門間で押し付け合いが起き、結局Web担当が片手間で抱え込み、半年後には更新が止まり、問い合わせフォームから来たリードへの返信も遅れる、という運用崩壊が発生します。一方、要件定義の段階で運用ガバナンスとKPIを決め、公開時点で更新フローと保守体制を整えておけば、同じ制作物でも公開後の事業成果は大きく変わります。
つまり、制作段階で運用設計を組み込むとは、制作プロジェクトのスコープに「公開後12か月の運用計画」を明示的に含めることを意味します。要件定義書、提案依頼書、見積依頼の中に、運用設計フェーズを明示的に書き込むこと。これが運用設計まで見据えた制作計画の入り口となります。
運用設計フェーズを工程表に組み込む具体的な書き方
工程表に運用設計フェーズを組み込むときは、要件定義の直後に「運用設計ワークショップ」を1〜2回設置するのが現実的です。参加者はWeb担当・関連部門・制作会社のディレクター、必要に応じて経営層と情シスです。ワークショップのアウトプットは「運用設計書」として1ドキュメントに集約し、KPI、更新フロー、保守体制、改善ロードマップを章立てで記述します。この運用設計書は、制作物の納品物の1つとして契約に組み込みます。納品物として明文化することで、運用設計が「あったらいいもの」ではなく「契約上必ず納品されるもの」になり、形骸化を防げます。
KPI設計と分析体制の作り方|公開後に動くダッシュボードへ
Webサイト制作公開後の改善サイクルを動かすうえで、KPI設計と分析体制は運用設計の心臓部にあたります。ここが整わないと、どれだけ高機能なCMSを入れても、どれだけ更新頻度を上げても、改善の方向性が定まらず、努力が空転します。
その理由は、KPIが「何を成功と定義するか」を決める基準だからです。基準が曖昧なまま運用を始めると、施策の評価軸がぶれ、関係者の意見が割れます。アクセス数を増やすべきなのか、滞在時間を伸ばすべきなのか、フォーム到達率を上げるべきなのか。議論の前提が共有されていなければ、改善は迷走します。
KPI設計を実務で動かすために、本記事では「目的→指標→運用責任者」という三層構造で整理することを提案します。
第一層は、事業目的の言語化。Webサイトが事業に貢献する経路を明示します。たとえば「BtoBの新規リード獲得」「採用候補者の応募」「既存顧客の問い合わせ削減」「ブランド認知の向上」などです。1つに絞り込めれば理想ですが、複数並列でも構いません。重要なのは、目的を経営層・現場・制作会社の三者で合意することです。
第二層は、目的に紐づくKPI指標の選定。BtoBリード獲得が目的なら、フォーム送信数、問い合わせ単価、特定資料のダウンロード数などが指標になります。採用が目的なら、応募数、エントリーフォーム到達率、社員インタビュー記事の閲覧数などが候補です。指標は3〜5個以内に絞り込み、月次レポートで追える粒度に整えるのが現実的です。
第三層は、各KPIの運用責任者の特定。指標は決めても、誰がデータを見て、どんなアクションを起こすかが決まっていなければ動きません。「フォーム送信数」のオーナーはマーケ部門、「採用エントリー数」のオーナーは人事部門、「サーバー応答時間」のオーナーは情シス、というように、KPIごとに責任部署と担当者をマッピングします。
分析体制としては、Googleアナリティクス4とサーチコンソールを最低構成として、必要に応じてヒートマップツール、フォーム分析ツール、SEO分析ツール、CRM連携を追加していきます。重要なのはツール選定そのものではなく、「定例で見るダッシュボードを1つにまとめる」という設計です。複数ツールにバラバラとデータが散らばっていると、月次レポートを作るだけで半日かかり、運用が続きません。BIツールやレポート自動化ツールを使い、定例ダッシュボードを1枚に集約しておくことが、Webサイト制作 公開後の運用継続性を大きく左右します。
ある士業の会社が、リード獲得を目的にサイトをリニューアルしたケースを考えてみましょう。公開直後はアクセスログを眺めるものの、「何を見ればいいかわからない」と感じるうちに、誰もデータを見なくなります。月次会議で「もう少しアクセスが欲しい」と話題になっても、議論が抽象化したまま結論が出ません。一方、KPIを「月間問い合わせ数」「主要サービスページ到達率」「ブログ記事経由のリード数」の3つに絞り、ダッシュボードを1枚に集約しておけば、毎月の会議は「どの指標が下がったから、どこを改善するか」という具体的な議論に変わります。
つまり、Webサイト制作 公開後のKPI設計とは、数値を眺める仕組みではなく、意思決定を駆動する仕組みだということです。指標は少なく、責任者は明確に、ダッシュボードは1枚に。この三原則を制作段階から組み込むことで、運用が「思いつき」から「事業活動」へと変わっていきます。
更新体制の組み方|人・プロセス・ツールの三軸で設計する
Webサイト制作 公開後の現場で最も詰まりやすいのが、更新体制の運用です。コンテンツが追加されない、社内承認に時間がかかる、誰に依頼すればよいかわからない。こうした更新の停滞は、サイトの鮮度を奪い、検索評価と読者体験の両方を毀損します。
更新体制を設計するうえでは、「人・プロセス・ツール」の三軸で考えることを推奨します。CMS選定論だけに偏ると、運用体制全体の問題が見えなくなるからです。
第一の軸は「人」。誰が更新するかというロール設計です。コンテンツ企画者、執筆者、編集者、デザイン担当、CMS入力者、公開承認者の6つのロールを意識し、社内で兼務するにせよ、外部に委託するにせよ、ロールごとの責任者を決めます。ロールの兼務はかまわないが、空白は許さない。これが原則です。たとえば「執筆は外部ライター、編集は社内マーケ担当、CMS入力は外部委託、公開承認は事業責任者」というように、明示的に割り振ります。
第二の軸は「プロセス」。更新の発生から公開までの流れを工程化します。ネタ出し→企画書作成→執筆→校正→デザイン調整→CMS入力→公開承認→公開→社内告知→効果測定という工程をフォーマット化し、それぞれの所要時間とSLA(サービスレベル)を定義します。プロセスが見えないと、誰がボトルネックかが特定できず、「気がついたら更新が止まっていた」という事態が起こります。
第三の軸は「ツール」。CMSだけでなく、編集ワークフローを支えるツール全体を指します。プロジェクト管理(タスク・スケジュール管理)、ドキュメント管理(執筆・校正の共有)、画像・素材管理(DAM)、コミュニケーション(チャット・コメント)、公開承認フロー(ワークフローエンジン)といった複数ツールを、どう連携させて運用するかを設計します。CMSの選定はこのツール群の一部に過ぎず、CMS単体ではなくツール群全体で評価する視点が必要です。
実務上、最も注意すべきは「更新工数を制作会社に依存しすぎる構造」です。すべての更新を制作会社にメール依頼している状態だと、月額数万円〜数十万円の更新費が発生し、しかも依頼から公開まで数日かかります。これでは公開後の運用は固まり、改善の試行回数も減ります。一方で、すべて内製化しようとすると、CMS入力のスキル習得、画像加工、SEO対応など、専門スキルを社内で抱える負担が大きくなります。現実解は、定型作業は内製、専門領域は外部委託というハイブリッドです。
例えば、アパレル系の会社が、新作情報・実店舗イベント・ブログ記事の3種類の更新を抱えていたとします。新作情報は月10件以上発生する高頻度更新で、定型フォーマットも決まっているため社内のCMS入力担当が対応するのが効率的です。実店舗イベントは店舗スタッフがフォーム入力し、本部マーケが承認して公開する分散型のフローが向きます。ブログ記事は専門ライターと外部編集者に外注し、月2本の公開ペースを安定させる、というハイブリッドが現実的です。
つまり、更新体制とは人・プロセス・ツールを三軸で設計し、コンテンツ種別ごとに最適なフローを使い分ける運用設計です。Webサイト制作 公開後の現場では、「何でもCMSで簡単に更新できる」という幻想は通用しません。簡単に更新できる仕組みを作るとは、運用ルールを明文化することと同義なのです。
保守・セキュリティ・サーバーの運用設計|リスクの重みづけで投資判断
Webサイト制作 公開後で軽視されがちな領域が、保守・セキュリティ・サーバーの運用設計です。表面上は地味な領域に見えますが、ここを怠ると、ある日突然サイトが落ちる、改ざんされる、SEO評価が一気に下がる、といった致命的な事態を招きます。
保守項目を網羅的に並べたチェックリストは世の中に多く存在しますが、本記事ではあえて「リスクの発生確率×影響度」で優先順位をつけるアプローチを提案します。すべての保守項目に同じ予算と工数を投じるのは現実的ではなく、リスクに重みづけして投資判断する姿勢が、運用設計の質を決めるからです。
具体的な保守項目を6つに整理し、それぞれのリスク特性を確認します。
第一に、CMS本体・プラグインのアップデート。WordPressをはじめとする主要CMSは、月次〜半年に一度のセキュリティアップデートを公表します。放置すると脆弱性を突いた改ざんやマルウェア混入のリスクが急上昇するため、発生確率も影響度も高い項目です。自動アップデート設定だけに頼らず、事前にステージング環境で検証してから本番反映する運用が必要です。
第二に、サーバー・ホスティングの監視。サーバー応答時間、ディスク使用量、SSL証明書の有効期限、メール送信ログなどを定期監視します。SSL証明書の失効はブラウザ警告を引き起こし、信用毀損に直結するため、影響度が高い項目です。
第三に、バックアップとリストア検証。毎日の自動バックアップは多くのレンタルサーバーで提供されていますが、「バックアップが取れていること」と「リストアが成功すること」は別の話です。半年〜年に一度はリストアの模擬訓練を行い、復旧手順を社内で確認しておく必要があります。
第四に、フォーム・問い合わせ系の動作確認。新規問い合わせを取りこぼすのは事業損失に直結するため、月1回はテスト送信で動作を確認します。スパム対策(reCAPTCHA、ハニーポット)の有効性も併せて検証します。
第五に、SEO・構造化データの健全性。Search Consoleでの警告チェック、リダイレクトの動作確認、サイトマップの更新などを四半期ごとに確認します。SEO評価の下落は緩やかですが、気づかないうちに大きな機会損失になります。
第六に、ドメイン・契約管理。ドメインの自動更新設定、レンタルサーバー契約の更新、SSL証明書の更新、第三者ライセンス(フォントやプラグイン)の契約管理など、年次で棚卸しすべき契約事項です。ドメインの失効は事業継続を脅かす致命的事態であり、責任者と更新フローを明文化することが不可欠です。
ある製造業(食品加工)の会社が、保守費用を圧縮するために「保守は社内で十分」と判断したケースを想像してみましょう。CMSのアップデートを忘れて1年放置した結果、脆弱性を突かれて改ざんされ、Google検索で「このサイトは安全ではありません」の警告が表示される事態に陥ります。復旧のために緊急対応費を払い、ブランドの信用も毀損し、社内の信任も失う。こうした事態は、保守費用を年間数十万円ケチった代償としては大きすぎます。保守は経費ではなく、リスクヘッジへの投資として捉え直す必要があります。
つまり、Webサイト制作 公開後の保守設計とは、「全部やる」でも「全部やらない」でもなく、リスクの重みづけで投資配分を決めることです。発生確率と影響度のマトリクスで保守項目を整理し、社内対応・外部委託・自動化ツールを使い分ける運用設計が、現実的な解になります。
改善サイクルの回し方|公開後12か月のロードマップ
Webサイト制作 公開後の運用設計を、より具体的に動かすために、公開後12か月のロードマップとして時間軸で整理しておくことをおすすめします。漠然と「改善し続けます」では現場が動かず、月単位でやることが見えていてはじめて、運用が習慣化します。
ロードマップを4つのフェーズで設計します。
フェーズ1:公開直後〜3か月(立ち上げ期)。この期間の主目的は、運用基盤の安定化と初期データの蓄積です。具体的なタスクは、KPIダッシュボードの完成、運用責任者の役割確認、更新フローのドライラン、保守ルールの社内浸透、計測タグの正常稼働確認などです。初期3か月は数値を「評価」するのではなく「観察」する期間と位置づけ、ベンチマークを取ることに専念します。アクセス数や滞在時間が想定より低くても、慌てて施策を打たないことが鉄則です。
フェーズ2:4〜6か月(仮説検証期)。蓄積したデータをもとに、改善仮説を立ててテストを始めます。ヒートマップとサーチコンソールから「離脱が多いページ」「クリックされていないリンク」「検索順位が伸び悩むキーワード」を特定し、優先度の高い改善から手をつけます。この時期は「小さく検証して、効果のあったものを横展開する」が基本姿勢です。1か月で5つの仮説を検証し、うち1〜2件が成果につながれば十分です。
フェーズ3:7〜9か月(コンテンツ拡張期)。サイト構造の核ができたあと、検索流入を増やすためのコンテンツ拡張に投資します。自社の専門領域に関連するキーワード群をマップ化し、トピッククラスター(柱記事と関連記事)を計画的に増やす段階です。月2〜4本の新規記事を継続的に公開できる体制が回り始めると、検索流入は緩やかに、しかし着実に伸びていきます。
フェーズ4:10〜12か月(最適化と再投資期)。1年分のデータをもとに、サイト全体のリデザインや機能追加を判断します。フォーム改善、ナビゲーション再設計、コンバージョン導線の見直し、サイト全体の高速化など、初期制作時には気づかなかった改善点が浮かび上がります。同時に、翌年の運用予算と改善計画を策定し、経営層へ報告するタイミングでもあります。
このロードマップを成立させるためには、月次・四半期・半期・年次の各タイミングで定例を回す仕組みが必要です。月次はデータ確認と改善仮説の議論、四半期はフェーズ進捗のレビュー、半期は中間振り返り、年次は次年度の運用予算策定です。会議体の整備は地味ですが、運用が習慣化するかどうかの分岐点になります。
例えば、観光業の会社が、新しい予約サイトを公開したとします。公開後3か月は「アクセスが少ない」と焦りつつも、データを蓄積する期間と割り切ります。4か月目に「予約ボタンのクリック率」が他のCTAより著しく低いという仮説を立て、ボタン位置・文言・色の3パターンをABテスト。結果、文言を変更したパターンで予約率が改善し、その学びを別ページにも横展開します。7か月目以降は地域名・観光テーマ別の記事を月3本ペースで増やし、検索流入が緩やかに伸びていきます。12か月目には、年次レビューで「次年度はモバイル予約フローの全面刷新」という重点投資を経営に提案できる。こうしたサイクルが回るかどうかが、運用設計の真価を決めます。
つまり、Webサイト制作 公開後の改善サイクルとは、12か月単位のロードマップを引き、月次定例で動かし続ける運動です。1か月だけ頑張る運用でも、突発的なキャンペーン依存の運用でもなく、緩やかに、しかし継続的に改善し続ける運動として捉えるのが、もっとも事業成果につながる姿勢です。
AI時代のWebサイト制作 公開後|仮想事例と未来予測
最後に、Webサイト制作 公開後の運用設計が、生成AIの普及によってどう変わっていくかを展望します。AI技術は単なるツールの追加ではなく、運用フローそのものを変える力を持ちます。これからの制作計画には、AIを前提とした運用設計を盛り込む発想が欠かせません。
まず注目すべきは、コンテンツ更新の生産性向上です。記事の構成案作成、初稿のたたき台、画像生成、要約・翻訳、SNS投稿文の作成など、これまで人手と時間を要していた工程の多くが、生成AIによって短縮できるようになっています。これにより、月2本だった更新頻度を月8本に上げる、多言語版を低コストで展開する、といった運用変革が現実的になります。重要なのは、AIが書いた文章をそのまま公開するのではなく、人間の専門編集者が最終品質を担保する運用です。AIは生産性を底上げするツールであって、品質責任の主体ではありません。
次に、分析とレポーティングの自動化です。月次レポートの作成、KPIサマリの自動生成、異常値の検知、改善仮説の提案といった領域は、AIによって大幅に効率化されつつあります。「アクセスが先月比で30%下がりました。原因として、特定流入元のリファラルが減少したことが考えられます」というレポートを、自動的に生成してくれるツールが普及し始めています。これにより、運用担当者は「データ集計」から「判断と意思決定」に時間を振り向けられるようになります。
第三に、サイト改善提案の自動化です。ヒートマップツールやセッション録画ツールが、AIによって「離脱が多いページに対する改善案」「ボタン配置の変更案」「コンテンツの追加候補」を提示し始めています。これからの運用担当者は、AIが提示する改善案を評価し、優先順位をつけ、実行判断するという役割にシフトしていきます。
ある金融サービス業の会社が、AIを活用した運用体制を整えるケースを想像してみましょう。月次レポートは自動生成され、運用担当者は要因分析と改善仮説の議論に集中。コンテンツ制作は社内ライターとAIアシスタントのペアで進め、月8本のペースで記事を公開。ヒートマップツールのAI提案を毎週レビューし、優先度の高い改善から実装。この体制は、従来の「月2本更新、四半期に1回の改善」というペースを大きく上回り、競合との差は時間とともに開いていきます。
ただし、AI活用には注意点もあります。第一に、ファクトチェックの徹底。金融、医療、法律などのYMYL(Your Money or Your Life)領域では、AI生成コンテンツの誤りが重大な事業リスクになります。専門家による監修プロセスを必ず組み込む必要があります。第二に、ブランドボイスの一貫性。AIが書いた文章は平準化しやすく、企業独自の語り口が失われる傾向があります。ブランドガイドラインとスタイルガイドを整え、AI生成物に対しても適用する運用が必要です。第三に、個人情報・機密情報の取り扱い。社内データをAIサービスに入力する際の情報管理ルールを整備し、リスクをコントロールする必要があります。
つまり、AI時代のWebサイト制作 公開後とは、生産性向上の機会と、品質・信頼性確保の責任が同時に大きくなる時代です。AIを「使わない選択」も「無批判に使う選択」も、どちらもリスクになります。運用設計の中に、AI活用方針とガイドライン、人間によるレビュー体制を明示的に組み込むことが、これからの制作計画の必須要件になっていきます。
まとめ
Webサイト制作 公開後を本番と捉え、運用設計を制作段階から組み込むことが、事業価値の高いサイトを育てる唯一の道です。公開ゴール病から脱却し、KPI・更新フロー・保守体制・改善ロードマップを設計し、AI時代の運用変革に備える。これらは制作後に考えるのではなく、制作プロジェクトの要件定義段階から議論すべきテーマです。今すぐ取り組むべき理由は明確です。サイトは公開した瞬間から競合と検索アルゴリズムの変化にさらされ、運用設計の差が日々の機会損失として積み上がっていくからです。これからWebサイト制作を発注する方、リニューアルを検討中の方、すでに公開済みで運用に悩む方も、まずは「公開後12か月の運用ロードマップ」を1枚にまとめるところから始めてみてください。運用設計まで含めた制作・伴走支援のご相談は、ぜひクライマークスまでお寄せください。
Web制作
大規模コーポレートサイトからサービスサイトやサテライトサイトまで、アートディレクションと情報アーキテクチャ設計を融合した、クリエイティブで訴求力の高いサイトを構築します。また、フロントエンドのみならずバックエンドのシステム構築、デジタルマーケティング支援までを総合的に提供しています。