Web制作の提案を公平に評価する方法 – RFP回答の比較チェックポイント
目次
複数の提案書、どうやって公平に比較すべきか?
複数のWeb制作会社から提案書(RFP回答)を受け取ったとき、
「どの会社が本当に自社に合っているのか分からない」と感じた経験はないでしょうか。
デザインも構成もそれぞれ異なり、提案の熱量もバラバラ。見積金額も大きく違う。
結果として、「安い方を選んだけど、結局やり直しが多くてコスト増になった」
「提案は良かったけど、実際の体制が弱くて納期が遅れた」など、判断ミスが起きやすいのがRFP評価の現場です。
本記事では、Web制作におけるRFP(提案依頼書)回答を公平に比較評価するための基準とプロセスを、
発注側の担当者の視点で徹底解説します。
単なる「スコア表の作り方」ではなく、提案書を“読み解く力”を養うための評価軸と実践手順を具体的に示します。
RFP比較評価における基本の枠組み
定性的評価と定量評価を統合する意義
RFP比較を行う際、最も重要なのは「定性的評価」と「定量的評価」をバランス良く組み合わせることです。
多くの企業では、「点数表で公平に判断しよう」と考え、各項目に配点を設けてスコアリングします。
しかし、実際に提案書を読み込むと、「数値化しにくい良さ」が存在します。
例えば、「提案書の文章からにじむ要件理解の深さ」「企業理念との親和性」「担当者の誠実さ」などです。
こうした「感覚的要素」を全て排除してしまうと、
「機械的に点が高いが、実際には現場が噛み合わない」会社を選んでしまう危険性があります。
したがって、理想的な比較フレームは以下のように組み合わせることです。
- 定量評価(スコアリング):明確な項目ごとに配点を設定(例:技術力20点、コスト20点、提案力30点など)
- 定性的評価(補正要素):面談時の印象、質疑応答での柔軟性、想定外質問への対応などを+/-補正
これにより、公平性を担保しつつも「人間的な判断」を残すことができます。
主要評価軸(理解力・提案力・技術力・体制・コスト・スケジュール)
RFP評価の軸は大きく分けて6つあります。
これらを定義しておくだけで、比較の精度が格段に上がります。
- 要件理解力
RFPに記載された内容をどの程度正確に読み取り、要件の背景まで理解しているか。
単なる「仕様対応」ではなく、「なぜその仕様が必要なのか」まで言及している提案は評価が高いです。 - 提案力(課題解決力)
現状課題をどのように整理し、どんなアプローチで解決するか。
ここでは“既存事例の流用”ではなく、“自社固有の課題へのカスタマイズ性”が鍵です。 - 技術力
CMS構成、ホスティング、セキュリティ、パフォーマンス最適化など、技術的裏付けの有無。
また、最新のフロント技術(React, Next.jsなど)やアクセシビリティ対応も評価要素に含めます。 - 体制・リソース力
担当チームの人数、スキル構成、バックアップ体制。
「誰がどこまで責任を持つか」が明確であるほど信頼性が高まります。 - コストの妥当性
単純な「安さ」ではなく、「費用対効果(成果とコストのバランス)」がポイント。
同じ金額でも提案範囲が異なれば、コスパの評価は変わります。 - スケジュール現実性
リリース時期に間に合うだけでなく、品質を担保したうえでの実現性が問われます。
リスクを織り込んだ計画か、リスケ余地があるかを見極めます。
これら6軸をもとに、「100点満点評価表」を設けることで、評価の標準化が図れます。
評価表・スコアリング方式の基本設計
評価表の設計では、「比較のしやすさ」と「ブレの少なさ」が鍵です。
製造業の企業がWebリニューアルのRFPを出したとします。
3社から提案を受け取り、各項目を5段階で評価しました。
以下のような表を用いると、客観性と議論の土台が明確になります。
|
項目 |
配点 |
会社A |
会社B |
会社C |
|
要件理解力 |
20 |
4 |
5 |
3 |
|
提案力 |
25 |
3 |
5 |
4 |
|
技術力 |
15 |
4 |
4 |
3 |
|
体制 |
15 |
5 |
3 |
3 |
|
コスト |
15 |
4 |
3 |
5 |
|
スケジュール |
10 |
5 |
4 |
3 |
ここでの総合点だけではなく、「どの項目が自社にとって最重要か」を明確にして重みを変えることで、
プロジェクト特性に合った評価が可能になります。
具体的なチェックポイントと読み解き方
提案書をただ読むだけでは、本質的な差は見えません。
ここでは「どこを見るか」「どう読み取るか」を掘り下げます。
提案独自性/差別化要素の見極め
優れた提案書は「あなたの会社のために作られた提案」であることが伝わります。
一方で、複数の提案書を読むと、テンプレート的な構成が多く見られるものです。
差別化を見るポイント:
- あなたの企業課題を「一般論」ではなく「固有の課題」として捉えているか
- 過去事例を「似たケース」として説明し、応用しているか
- 成果を定量的に説明しているか
小売業の会社が「EC機能強化」を目的にRFPを出した場合、
単に「ECリニューアル実績があります」という提案では弱く、
「購買率改善に必要なUIテスト設計を提案」と書かれていれば、理解度・提案力ともに高く評価できます。
要件理解度と抜け漏れの検査
RFP回答の「抜け漏れチェック」は、最も基本的かつ重要です。
多くの担当者が陥るのは、「提案書にすべて記載されている」と思い込むこと。
実際には、RFP項目の一部を「見落とし」または「意図的に省略」しているケースがあります。
そこで有効なのが、RFP項目を縦軸に、提案内容を横軸に並べたマトリクス表です。
これを使うと、「未回答」「曖昧な回答」「条件付き対応」などが一目で分かります。
技術構成・アーキテクチャの妥当性
Web制作提案の中核となるのが、CMS構成・システム設計・ホスティング構成です。
ここを軽視すると、リリース後の運用コストやパフォーマンスに影響します。
提案書で確認すべきは以下の観点です。
- 技術選定理由が明確か(例:WordPress選定の根拠がセキュリティ対応方針と一致しているか)
- 将来の拡張性(ヘッドレスCMS構成やAPI連携を見据えているか)
- 障害対応・冗長化設計が提示されているか
複数CMS提案を受けた場合、
もし 「今後のコンテンツ拡充」を重視しているなら、初期コストがやや高くても拡張性重視の構成を選ぶべきです。
リスク想定・代替案の提示有無
最良の提案とは、成功のシナリオだけでなく、「失敗しないための予防策」まで提示しているものです。
納期遅延や要件変更時の対応策、リスク分担の考え方が明記されていれば、成熟度の高い会社といえます。
例えば、
「サーバー障害時は72時間以内に復旧」などの具体数値があれば信頼性は高く、
逆に「迅速に対応します」だけの表現は評価を下げるべきです。
重みづけカスタマイズと比較フロー
プロジェクト特性に応じた重み設定例
RFP比較で最も誤解されやすいのが、「すべてのプロジェクトに同じ配点を適用する」ことです。
たとえば、
- BtoBのWebサイト → 企業の文化・ビジネスの理解力、技術力・信頼性重視
- BtoCキャンペーンサイト → デザイン提案力・スピード重視
- 採用サイト → コンテンツ企画力・体制重視
このように、目的に応じて重みを変えることが不可欠です。
例えば一度サイバー攻撃を受けてしまい、リニューアルを決意して、RFPを発行した場合、セキュリティリスクが高いため「技術力」と「運用体制」に50%以上の配点を置くのが妥当です。
逆に、短期キャンペーンなら「スケジュール」と「提案力」に重みを移すべきです。
スコアリング結果からのポスト補正手法
スコアだけでは決まらない「最後の判断」こそ、実務で重要です。
BtoBメーカーの例として、
スコアリングでは「会社A=85点」「会社B=83点」「会社C=80点」と出ました。
しかし、面談を経て「会社Bの担当者がリスク対応を丁寧に説明した」ため、最終的にはBが選ばれたというケースもあります。
このように、最終判断では「補正要素(定性判断)」を反映させましょう。
代表的な補正項目は以下です。
- 担当者の対応姿勢
- 提案後の質疑反応スピード
- 柔軟性・誠実さ
最終判断プロセスの流れ
- 各担当が個別スコアをつける
- 評価会議で平均スコアを算出
- トップ3社を抽出し、面談・ヒアリング
- 補正要素を加味して最終スコアを決定
- 理由を文書化(後日の説明責任のため)
このプロセスを文書として残すことで、
「なぜその会社を選んだのか」を後から説明できるようになります。
公的機関や大企業では、コンプライアンス上の証跡としても必須です。
失敗しやすいパターンと回避策
コスト最重視による過小提案リスク
Web制作RFPで最も多い失敗が、「安さで選んで後悔する」ケースです。
見積が安い=効率的とは限りません。
「最安値の制作会社」を選んだ結果、納品後の修正費用やサーバー維持費が高くつき、
総コストではむしろ高額になることもあります。
コストはあくまで「成果とのバランス」で判断しましょう。
体制軽視による納期遅延リスク
提案書で担当体制を軽く見てしまうのも危険です。
「PMが1名」とだけ書かれた場合、そのPMが他案件を兼務している可能性もあります。
実際には、「週ごとの稼働体制」や「代替担当者の有無」まで確認すべきです。
提案内容の定量化乏しさによる誤判断リスク
「SEOを強化します」「デザインを改善します」といった抽象的表現に注意。
成果指標(KPI)や効果測定方法がない場合、実施後の評価が困難です。
提案書の中に「期待値」や「測定指標」があるかを確認しましょう。
これからの時代におけるRFP評価の進化
AI支援ツールや比較プラットフォーム活用
近年では、RFP評価そのものを支援するツールが登場しています。
AIが提案書を解析し、文章構成・キーワード一致度・提案整合性などを自動スコアリングする仕組みもあります。
これを補助的に使うことで、担当者の主観を減らすことができます。
DX・クラウド・セキュリティ視点の追加評価軸
特にDX推進を目的とする案件では、「クラウド構成の理解度」「ゼロトラスト対応」などの新基準が求められています。
RFPの評価項目にも、これらの観点を追加することで、将来のリスクを最小化できます。
ベンダーとの継続関係性を評価に組み込む方法
一度限りの発注ではなく、長期的なパートナーシップを前提にした評価も重要です。
提案書内に「運用後の改善提案」「中長期サポート計画」がある場合は高く評価すべきです。
Web制作は「納品して終わり」ではなく「育てるプロセス」であるためです。
まとめ
RFP評価は単なる「点付け作業」ではなく、
「自社に最適なパートナーを見極めるための戦略的プロセス」です。
提案を比較する際は、
- 定量評価で公平性を担保し、
- 定性評価で将来性を見極め、
- プロジェクト特性に応じて重みを調整する。
この3つを実践するだけで、選定の精度は格段に上がります。
今まさに提案を比較中の方は、この記事をもとに評価表を再設計してみてください。
提案の「見えない差」を可視化することが、成功するWeb制作の第一歩です。
Web制作
大規模コーポレートサイトからサービスサイトやサテライトサイトまで、アートディレクションと情報アーキテクチャ設計を融合した、クリエイティブで訴求力の高いサイトを構築します。また、フロントエンドのみならずバックエンドのシステム構築、デジタルマーケティング支援までを総合的に提供しています。